『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』

木野 親之著
『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』
―この時代をいかに乗り切るか―

2月7日 「心が滅びるよ!」

「忙しい忙しいと言っていては、心が滅びるよ」と、幸之助は言って
いました。

時間だけは、誰にでも平等に与えられている。
時間に追われて、忙しい忙しいと言っていると、生産的な前向きの
気持ちまで、滅びてしまうのです。

時間に縛られる人生ではなく、時間を生かす人生でありたいと願え
ば、その時から心に余裕がでてきます。

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安岡正篤一日一言

知命・立命・天命②/安岡正篤一日一言0206

命とは先天的に賦与(ふよ)されておる性質能力であるから「天命」と謂(い)い、またそれは後天的修養によっていかようにも変化せしめられるものという意味において「運命」とも言う。
天命は動きのとれないものではなく、修養次第、徳の修めかた如何(いかん)で、どうなるか分からないものである。
決して浅薄な宿命観などに支配されて、自分から限るべきものではない。

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『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』

木野 親之著
『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』
―この時代をいかに乗り切るか―

2月6日 「一念を定める」

松下電器は、昭和七年四月、貿易部を新設し、自らの手による輸出事業に
着手しました。幸之助三七歳の時です。
当時の担当部長は、「貿易の経験者は一人もおらず、英文タイプも
入手するのに、数ヵ月かかったが、商社に依存せず、自ら市場を
つかむことから始めた」と。そして、三年後には、松下貿易株式会社を設立。
「一念を定めれば、中小企業でも、その気になれば誰でも出来るよ」。
幸之助は、こうして戦前から世界市場へと大きな夢を膨らませていました。

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心の刀

早起きの刀、というのがある。じぶんは、朝はやく起きて、勉強にゆく。あるいは、しごとにかかる。そうして一定の時間、努力をし、さて終わった。しかしまだ寝ている者がある。それをみたとたん、「このやつ……まだ寝ている」と不快に思う。「じぶんのように勉強してくれるといいのに」といったような心になりがちである。

「自分は、朝はやくから、努力をしてきたのに、こんな、なまけ者がいるから、家の中がだめなのだ」と腹がたってしかたがなくなる。「せめて家の中の掃除でも、ちゃんとしてくれていたら、どんなにかすがすがしいだろうに」と不満をこめた眼で、にらむ。

これでは、せっかく、じぶんが、よいことをしてきても、なんの役にもたたない。なぜなら、じぶんは早く起きて勉強してきたのだというので、そうでない人を、ズバリと斬りつけているからである。

むかし、学校で、修身というものをならった。こうしてはいけない、ああしてはならないと、いっ

たようなものを、たくさん、教えこまれたような気がする。そうすると、それが、いつのまにか、人にたいする責め道具になっている。

ウソをついてはいけない。こういうことがあるならば、それは、じぶんの行なうべきことだと心がけていれば、それで十分なはずである。ところがその修身の徳目が、実行できない人にたいする批判の刀になっていることが多いのである。

こういう場合には、斬りつけられた方では、かならず、たちむかってくるようにできているところが、妙味のあるところだ。たとえば、「こうしなくてはならぬのに、なぜ、しないか」と刀をふりあげると、「いや、しない。しないのが何がわるいか」というように、刃向ってくる。

倫理道徳の実践は、じぶん自身が行なうのが本筋である。他人にその実践を強制したり、また実践できない人を非難攻撃したりすること自体が、倫理道徳の実践ではないのである。

人間は、神ではないから、どうしても、そうした醜悪な面が出やすい。それが人間というものであろう。

もし、そうした刀をぬいても、すぐに、それを引っこめるとか、もし人を斬ってしまっても、早く詫びて、ちゃんとしまつをつけるとか、そうすることのできる人間になることが第一の目標である。

心の問題は、ひじょうにこみ入っているので、そうした自覚をもって、勉強をしてゆかないと、なかなかそれができにくい。ぬいても抜きっぱなし、斬っても斬りっぱなしで、平気な顔をしているが、あとで、ひどい目にあうことに気がつかない。

日常平素から、ちゃんと心がけ、自覚をふかめてそうならないように、勉強をすすめてゆくことが、どうしても必要になるのである。

それは、かならず、なくてはならない努力の目標なのである……。あなたにも。わたしにも……。

(『新世』昭和三十七年十月号より*表記、表現は掲載時のままです。

すなおな心の陰と陽

倫理法人会は、倫理経営の土台である純粋倫理の学習と実践を通じて、経営者の自己革新をはかることを目的としています。自己革新をはかるとは、言い換えれば、「すなおな心を目指す」ことだと言えるでしょう。

その、すなおな心には、陰と陽の二面があります。

陰の面とは「受容」です。すべてをそのまま受け入れる心になることです。例えるなら、水がどのような形の容器でも、そのままに受け入れ、自らの姿を変えるような柔軟な心の様子です。

受ける行為の典型といえるのが「ハイ」という返事です。倫理運動を創始した丸山敏雄は、「ハイ」の返事について、次のように述べました。

この「ハイ」は簡単なようであるが、ただ人の言葉を聞いて、「ハイ」と返事するのではない。すベてを受け容れる絶対境の表現である。寒暑風雨、順逆治乱、そしりも怒りも、その悉(ことごと)くを受けて排斥(はいせき)せぬ。(『純粋倫理原論』)

経営者モーニングセミナー(MS)では、基本テキストである『万人幸福の栞』を輪読しています。輪読とは、数人が一冊の本を順番に読むことであり、MSで輪読する際には、「ハイ」と返事をしてから、該当する箇所を読み進めます。また、リーダーから読み間違えを指摘された場合も、「ハイ」と返事をし、その指摘を受けてから読み直します。双方ともに、受容することを「ハイ」の返事で表現しているのです。

MSに限らず、日常生活で返事をする機会は多くあります。家庭において、家族から名前を呼ばれる。会社において、上司や部下、同僚から名前を呼ばれる。例え相手が誰であっても、すべてを受け入れる、歯切れのよい「ハイ」の返事を目指したいものです。

続いて、すなおの陽の面は、「発動」です。受容を水とするならば、火のように、積極的に働きかけることに例えられます。

一度始めたことは、最後までやり遂げる。グズグズしたり、気を

緩めたりせず、大胆に、一気呵成に行なう。気づいたらすぐする「即行」の実践とは、まさにこの能動的な陽の面を、日常生活の起居動作に及ぼしたものでしょう。

私たちの日常は、様々な気づきで溢れています。その気づきをあやふやにせず、先延ばしにせず、迅速に処理すること。それはまさに、すなおな心境に至るための要諦に他なりません。

また、「即行」の実践により、実行力・判断力・解決力が養われます。この三つの力は、事業商売には欠かせない能力でしょう。

最好のチャンスであるその一瞬を逃さず、的確に捉えて行動に移すことが「即行」の実践であり、すなおな心の陽の面、積極的に働きかける発動となるのです。

丸山敏雄は「すなお」という言葉に「純情」の文字をあてました。純情は、受容と発動、すなわち陰と陽の二面を持ち合わせているのです。純情(すなお)な心境を目指して、日々、自己革新をはかってまいりましょう。

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