意欲と実行が仕事を成就させる

カーアクションで、自動車が火の輪や爆発をかいくぐるシーンは迫力満点です。片輪走行をするカースタントのシーンなどでは、そのテクニックに驚嘆させられるものです。

しかし、これはあくまでショーや曲芸の世界の話です。事業経営が曲芸では、毎日ハラハラドキドキで身が持ちません。片輪走行の不安定さでは、周囲も気が気ではないでしょう。

自動車においては、前後左右の車輪が接地して、同じ方向に回転するから安心して走れるように、仕事においても、地に足の着いた安定感が求められます。

会社経営においては、「経営者」と「社員」は両輪の関係にあるといえます。企業理念や創業の精神を、経営者も社員も共通認識として持っていることは、両輪が同じ方向へ回っていることに通じるでしょう。経営者の思いと社員の思いの一致は、社内の一体感やお客様への信頼にもつながります。

「事業」と「家庭」も両輪です。お客様第一をモットーに起業したAさんは、あわせて、和やかな家庭づくりに努力しています。「企業は社会のためにある」という信念と「家族を大切にする」という心が両輪となって、事業の安定と繁栄に結びつきました。

また、仕事をする上で、「意欲」と「実行」が両輪として補い合い、高め合っていることも大切です。

金属加工会社で働く若手のBさんが、一つの仕事を任されました。機械を使って、金属材料に傾斜をつけていく作業です。

Bさんは、若い自分が仕事を任されたことに喜びを感じ、やる気に満ちていました。ところが、実際にやってみると、製品としての精度がなかなか高まらず、さらに、完成まで時間がかかって仕方ありません。〈やろう〉という意欲はあるものの、思うようにマスターすることができないのです。

〈このままでは埒があかない。通り一遍のことではなく、何かチャレンジしてみよう〉

そのように思い立ち、先輩の仕事を傍から見ているだけではなく、一挙手一投足を真似てみるようにしました。仕事だけでなく、休憩や昼食も先輩と一緒にとるようにしました。

すると、これまでの停滞が嘘のように、作業スピードが増した上に、完成品の精度も上がっていきました。やがて、自分なりのアイデアも製品に加味され、部門のリーダーを任されるまでに成長したのです。

このように、「意欲」と「実行」は両輪の関係にあります。〈こうしたい〉〈こうなりたい〉という意欲があっても、実行が伴っていなければ、なかなか実になりません。

また、実行力はあっても、〈何のために〉〈どうしてもこれがしたい〉という信念がなければ、その働きは空回りしてしまいます。

経営者と社員、事業と家庭、意欲と実行など、仕事を進める上での両輪は、求めれば様々にあることでしょう。そのどちらもが安定して回っていくように心がけたいものです。

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補い合って力が湧き上がる

両輪とは、文字通り二つの輪のことです。車でいえば、左右のタイヤが同じ性能と力量を有し、同じ機能を発揮する一対の関係性があって初めて、思う方向に進むことができます。

そこから転じて、両方が一揃いになって役に立つこと、互いに欠くことのできない密接な関係にあることのたとえとして〝両輪〟という言葉が使われます。

では、この「一揃いになって役立つ」「欠くことのできない密接な関係」あるいは「補い合う」という特質と、調和・協調の視点から、人に関する両輪的役割のあり方を見ていきましょう。

まずは、「心と身体」です。肉体の動作は〈あれをしよう〉〈ここへ行こう〉といった心の動きに応じて開始されます。いわば、心の表現者が肉体であると言えます。

そうすると、心が主体のように思えます。しかし、肉体がなければ心の状態を表現することはできませんから、心と身体は互いに補い合い、欠くことのできない密接な関係にあり、まさに両輪だといえるでしょう。

心が晴れやかで、はつらつとしていれば肉体も健康であり、肉体が健康であれば、心も明朗でいられます。心身が一揃えになって、私たちは明るく働くことができるのです。真の健康維持には、心身双方が健全に機能を発揮しつつ、連携を深め合うことが求められるのです。

また、お互いに補い合うことで力を発揮する両輪の関係として、「夫婦」が挙げられます。夫が親愛の情に燃えて優しくすれば、妻は、夫に尊敬・信頼という情を返してくれるのです。

ある経営者が新規事業を手がけた時の話です。新規採用者の案件をなかなか決めきれずにいた際、妻に相談をしました。

妻は会社の仕事には直接携わっていませんが、夫の相談する内容から、また夫の表情から、事の次第を理解しました。そして、いくつかの意見を述べた上で、「あなたの決断と同じ気持ち」であることを伝えました。

夫は、日頃は経営に携わることのない妻が、自分と会社のことをしっかり観察してくれていたことに驚きました。そして、妻の理解と応援を得て、毅然とした決断ができたのでした。結果、当時採用した数名の社員が期待に応える働きをしてくれています。

このように、両輪を成す双方が補い合って、十分な働きをするための要件には、次の4つのことが挙げられるでしょう。

①互いの機能や性質、役割を知る。②互いの違いを知り、その違いを尊ぶ(敬う)。③相手が必要な存在だと知る。④双方共に積極的に関わり続ける。

「心と身体」「夫婦」を両輪と捉える視点は、生活上の苦難に直面した際の、克服のヒントになります。車が前進しない場合は、どちらか一方ではなく、両輪を調べて故障箇所を発見するように、苦難に直面した際は、双方をバランス良く見つめる中に改善のヒントが見つかるのではないでしょうか。

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安岡正篤一日一言

学問は人間を変える/安岡正篤一日一言0127

学問は人間を変える。
人間を変えるような学問でなければ学問ではない。
その人間とは他人のことではなくて自分のことである。
他人を変えようと思ったならば、先ず自分を変えることである。

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『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』

木野 親之著
『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』
―この時代をいかに乗り切るか―

1月27日 「経営のコツ、ここなりと気づいた価値は百万両」

昭和8年5月、38歳の時、自主責任の経営を進めるため、日
本で初めての事業部制に踏み切った松下幸之助は、さらに翌
9年の元旦に、従業員への新年のお年玉として、この言葉を贈
りました。

それは、企業経営の根幹は、いつに従業員の創意工夫にある
ことと、従業員一人ひとりが経営意識をもって、仕事に取り組む
ことの大事さを教えたもので、永遠に変わらない松下の基本的
な考え方の一つとなっています。

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安岡正篤一日一言

健康の三原則/安岡正篤一日一言0126

第一に心中常に喜神を含むこと。
(神とは深く根本的に指して言った心のことで、どんなに苦しいことに逢っても心のどこか奥の方に喜びをもっということ。)
第二に心中絶えず感謝の念を含むこと。
第三に常に陰徳を志すこと。
(絶えず人知れず善い事をしていこうと志すこと。)

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