隙間時間を読書にあてる

経営者モーニングセミナーのテキストとして親しまれている『万人幸福の栞』の著者・丸山敏雄は、大変な読書家でした。

その蔵書は、東京都武蔵野市にある倫理資料館に「丸山敏雄記念文庫」として保存されており、約三五八〇冊に及びます。丸山敏雄は大きな転機のたびに、保有していた書物を散逸したため、記念文庫にあるものは、実は生涯に読んだ本のごく一部となります。

残された蔵書のうち、約三四〇冊は伝記類です。かつて丸山敏雄は、知人に伝記を読むことを次のように勧めていました。

「どういう方面の人物でもよい。成功者でも失敗者でも、すべてが先輩の尊い体験の報告であり、身をもって行なったよき教訓である。(中略)困苦にぶつかって百折不倒、克苦奮闘、ただ一貫不断の努力のみが人に成功の栄冠を与えるものであるという人生哲学は、人物の伝記を読むと自ら打ち立てられてくる。 そしてまた、書中の人物のすさまじい努力が、いつも自分を激励してくれる。ある時は我が友となり、ある時は我が師となって、いつもいつも教え励ましてくれる」(『丸山敏雄伝』より)

試練は、その人を成長させるために起きるともいわれます。それらに打ち勝ってこそ、充実した人生を得られるのです。人生や仕事の上に突然襲いかかってくる困難な問題を乗り越えるには、その心構えや生き方のモデルが必要になる時があります。伝記は、チャンスをつかむヒントを私たちに示してくれる存在でもあるのです。

読書によって得られる効果は、知識の取得、人格の形成、暮らしのすじみちの発見など様々です。自分の仕事や趣味に関連したものだけでなく、知人や尊敬する人たちから勧められた書物にもチャレンジしたいものです。普段は関心を持たない分野であれば、良い機会だと捉えましょう。積極的に親しむことによって、新たな発見や世界観が広がり、今までになかった楽しみにもつながります。

世間で評判の高い本は、たとえ、〈自分には必要がないだろう〉と感じたとしても、あえて読んでみることも大切です。

丸山敏雄は「いい本のある書店の前を通りかかると、何かしら匂うような気がする。酒好きが酒の匂いに敏感なように」と述べています。文学、芸術、伝記、宗教、倫理、哲学……と広範多岐にわたる読書習慣が、良書を見分ける力を磨き、やがては生活法則のエッセンスをまとめた『万人幸福の栞』を誕生させることにもつながっていったのです。

読書ができる時間をじっくりと取れることが一番の理想でしょう。しかし、それが不可能であっても、仕事の合間の休憩時間や移動時間、就寝前や朝食後から家を出るまでの間など、わずかな隙間時間を利用して、書物に親しむ習慣を身につけたいものです。

書物は、たった一度しかない私たちのかけがえのない人生を、より充実させサポートしてくれる頼もしき友であり師匠なのですから。

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良書を読む

本はきらいだ。読む暇もない。でもボケたりはしないぜ」と豪語している人がいた。確かに仕事はよくやるし、元気だ。ところが停年を過ぎると、物忘れも多くなり、言うこともチグハグになった。自分の意見を一方的に押し付けたり、世情への批判もピンボケになってしまった。そして淋しそうにひっくり返って、テレビばかりうつろに見ている。

頭の働きや知覚がにぶることをボケるというが、もっと広い意味では、自分のゆき方、身の処し方、今日、明日のやり方などがはっきりせずボーッとなっていることなども、ボケのひとつである。肉体的には二十歳を超えたあたりからボケ(衰え)が始まっているともいうし、年配になると精神的に悪知恵の方がよく働いて、その結果、まわりからうとんじられたり、案外損をしている。これも実は人生的ボケのひとつである。

とにかく人生は自分のためのことと、他人のためのこととの間にあって、交錯して、微妙に悲喜交々の綾(あや)を織りなしている。古来この綾について、いろいろと先人は研究し、著述をし、言い残してきた。良書を読むと、そうしたことが分かるようになり、折にふれ、時にのぞんで自分の生活の支えとなる。人生のボケかたにもいろいろとあるので、良い本をまじめに読むと、自然にそのボケが少なくなる。それは読むということの訓練によるところが多い。

老人性痴呆症の専門家である橋爪孝次博士も「活字から離れてテレビばかり見ていたり、活字離れをしていくと社会全体としての能力が落ちてしまうのではないでしょうか。社会だけでなく、個人でも同じです。活字を見ることは、人間の頭の活力、判断力、想像力、記憶の整理などに必要なことなのです」と述べておられる(『ボケの原因は30代・40代にあった』かんき出版)

寝ころがってテレビを見るのも悪いとは言えないが、安易に眼に入ってくるものには、必ずしも強くは残らないところがある。やはり一字一字を追ってまじめに読む労力は、頭をボケさせないし、とくにそこから得られた真理は、人生ボケを少なくするのに役立つ。

どうしてよいか分からないことは、しょっ中である。そうしたものに光をあたえる道はいろいろとあるが、然るべき良書を自分で読んだり、何人かと読みあって意見を交換したりするうちに、ハッと心にひらめくものを与えられることが多い。これを学習という。こうした良書の学習は、個人でも多人数でも効果的である。

毎日が忙しくて、読書の暇などないという人は実際にいる。一字一字読むのに苦労するという人もいる。しかし何も学者やもの識りや理屈屋になるのではない。日常の生活の指針となり、実践の手引となるものを読書から得ようというのである。週にひと時、月に二時、読書の時間がとれないことはあるまい。その時間がとれないとは、すでにボケているのではなかろうか。(月刊『新世』一九九三年二月号「新世言」より)

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気づいたことは行動に移そう

持ち前の明るさが魅力のO氏は、「気づき」を疎かにせず、即実行を心がけている経営者の一人です。建設設備工事に携わるO氏は、ある日曜日、早朝三時過ぎに目が覚めました。通常より早く目が覚めてしまったものの、〈そうだ、あの仕事をやってしまおう〉と思い立ち、翌日の打ち合わせのための資料を作成しました。

翌日、朝から緊急対応の電話が鳴り、現場に直行。その後も別の顧客から連絡が入り、午前中は一度も会社に戻ることができませんでした。それでも、前日に資料作りを済ませていたお陰で、午後にはスムーズに打ち合わせを進めることができたのです。

O氏は、日々の仕事の中で、こうした体験を幾度も重ねているうちに、即行の実践の大切さを実感するようになりました。他にも、車で移動中に道路の溝から水が溢れていることに気づき、Uターンして戻ったところ、水道管が破裂していたことがありました。すぐに水道局に連絡をして、大惨事を防ぐことができたのです。

「気づきは宝。即行動に徹していけば、必ず物事は好転する」とO氏は実感を込めて語っています。最近ではますます勘が冴え渡り、仕事上の決断にも磨きがかかってきたといいます。

経営者には勘が必要です。一つの商品を見て、「これは売れそうだ」「今はやめておこう」といった勘が働くかどうかは、経営者にとって必要な能力の中でも、特に重要なものといえます。

純粋倫理を学ぶ経営者の中には、先のO氏のような体験を持つ方がたくさんいます。直観力はどのように養っていけばよいのでしょう。

「気がついても、いっこうに手を出さず、強情をつっぱって、なまけ心、心配性が面(かお)を出して、せっかくのチャンスを取りにがす。世の中には宝の山に入りながら、素手でぶらぶら引返す人が、どれだけあるであろうか」(『万人幸福の栞』第一条)

日常生活の中での気づきは様々にあるものです。それを活かせるかどうかは、行動に移すか否かにかかっています。

ニュートンは、「質量のある物は、ほかの物を引き付ける力(引力)を持っている」という万有引力の法則を発見したことで知られています。ニュートンは、地上の引力が、月などに対しても同様に働いている可能性があることに気づいたとされています。その着想に基づいて、科学的な研究を行ない、万有引力の法則を発見するに到りました。「気づき」と「行動」が、偉大な発見に結びついたのです。

天からの指令である気づきを真摯に受けとめ、小さいことこそ大事に、行動に表わしていく。〝なまけ心〟や〝心配性〟が面を出す前に行動に移すことで、心は澄んでいく。その明朗な心に、さらによい気づきがある――。この好循環を作るのが即行の実践です。

即行と明朗は、相関関係にあります。即行により明朗な心が高められ、明朗な心境から、さらに気づきが洗練されるというサイクルを構築していきたいものです。

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平素の実践に勘はひらめく

会社経営は、決断の連続です。日々、大小様々な判断、選択、決断が求められます。

様々な選択肢の中から一つを選択するために、時には膨大なデータを読み込み、人の意見を聞き、あらゆることを勘案し、考えに考え抜いても、最後はいわゆる勘、ひらめきによって決断することも多いでしょう。

「経営の神様」といわれた松下幸之助は、何かを判断する時に、実に鋭い勘を持っていたそうです。しかし、その一方で「勘で判断してそれでよしとするのではなく、自分の勘を確かめるように何度も納得のいくまで考え続けていた」と、二十年以上にわたって身近に接してきた江口克彦氏は語っています(『心はいつもここにある』PHP研究所)。松下幸之助は、勘の鋭い人でありながら、「なぜ」という問いを繰り返す「考えぬく人」でもあったようです。

囲碁や将棋、あるいは相撲など勝負事の世界でも、勘は非常に重要です。ひらめいた一手がその後の流れをつくり、一瞬の判断が勝敗を左右します。そして、多くの達人、名人が語るように、そうした時の勘も、日常の「なぜ」を追求する努力、一つのことを研究練磨する中に磨かれていきます。つまり、平素のあり方こそが、「いざ勝負」という時の勘働きに大きな影響を及ぼしているのです。

倫理研究所の第二代理事長であった丸山竹秋は、直観や勘のひらめきについては、生活全般の様々なことが大きく関係していると述べました。

「親にいつもタテつき、人とケンカをし、食を粗末にし、環境(まわり)や自然をバカにしている者には、勘はひらめかない」(「勘をはたらかすには」『丸山竹秋選集』)

そして、「何もせずにいて、どうしてあやふやな勘に頼れるか」「濁った心には濁ったものしか映らぬ」と厳しく指摘します。つまり、倫理法人会で学ぶような日常の実践が、勘を映す、その心に磨きをかけるのです。

ある勝負の世界に身を置いていた人は、日頃から身の周りの清掃を怠らず、大勝負の前には、家族で家の大掃除までしたそうです。一見、勝負の世界からかけ離れた日常生活の場を清めることが、自身の心を整え、それが勝負に際して、より良い直観をもたらす土台となることを経験から掴んでいたのでしょう。

経営上の判断には「速さ」と「正確さ」が求められます。気づきや直観が働いても、迷ったり、躊躇していては好機を逃します。時には熟慮することも重要でしょうが、熟慮したつもりが、結果的には迷いや躊躇が生じるのであれば、普段からの「即行」の実践に、より磨きをかけるべきでしょう。それが判断の「速さ」につながるからです。同時に、判断の「正確さ」を高めていくべく、日常の様々な実践を深めていきましょう。

日常の実践を通じて目指すのは、純情(すなお)な心です。勘や気づきを映す濁りのない心が、リーダーとしての迅速な、確かな決断の土台となるのです。

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長考に好手なし

今年の上半期、一人のプロ棋士が大きな話題を集めました。史上最年少でプロ入りし、公式戦29連勝という新記録を達成した藤井聡太四段です。

藤井四段はプロ棋士としてのデビュー戦となった対局で、中盤にこれまでの定跡にはない意外な手を指しました。周囲の観戦者からは「ん? おかしい」と声が漏れ、この後、藤井四段が劣勢になるだろうと思われました。

しかし、本人にとって、この一手は、自身の感覚に即した最善の一手だったのです。結局、これが決め手となって、熱戦の末、藤井四段が勝利を収めました。

対局を解説した中村太地六段は、「藤井四段の直観の正確さがこの場面に表われた。将棋界には『長考に好手なし』という格言があるが、早くパッと浮かんだ、直観に基づいた指し手のほうがいい場合がある」と賛辞を送っています。

藤井四段が将棋を始めたのは、5歳の時でした。幼少の頃から、王手を連続させながら最短の手数で相手の玉を詰ませる「詰め将棋」を飽きることなく解き続けました。膨大な手の中から、最善の一手を瞬時に導き出す藤井四段の直観は、この「詰め将棋」で養われたといわれています。

将棋における直観について、プロ将棋界の第一人者である羽生善治二冠は、自著『決断力』の中で「パッと一目見て、『これが一番いいだろう』と閃いた手のほぼ七割は、正しい選択をしている」と語っています。

このことは将棋に限らないでしょう。仕事上で何かアクションを起こす時、時間をかけて判断するよりも、「これがいいだろう」という第一感を信じて行動した方がうまく運ぶ場合があります。むしろ時間があればあるほど細かなことにまで気が行き過ぎて、かえってうまくいかなかったという経験を持つ人も多いでしょう。

先週の号では、直観を磨き高めていくためには、気づきを疎かにせず、すぐに処置する即行(そっこう)の実践が大切だと記しました。

 

気づいた時、それはそのことを処理する最好のチャンスです。そのチャンスを逃さず、気軽にさっと処理することは、ここ一番の時に直観を働かせるトレーニングになります。そして、直観に身を委ねることができる自信と覚悟も、同時に備わってくるはずです。

以下に、直観を養うための具体的な即行の実践例をいくつか紹介しましょう。

◇朝目が覚めたら、さっと起きる。◇さっと顔を洗い、テキパキと朝

食を済ませる。さっと出勤する。

◇仕事は、間をおかず行なう。

◇手紙の返事はすぐに書く。

◇仕事を明日に残さない。

◇仕事が終われば、さっと帰る。◇飲み会は、さっと引きあげる。

◇夜更かしをせずに、さっと寝る。

常に決断を求められる経営者にとって、直観力を磨き高めることは、そのまま企業の繁栄につながる秘訣ともいえるでしょう。

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