『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』

木野 親之著
『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』
―この時代をいかに乗り切るか―

2月26日 「成功のカギは」

「僕は二人で仕事を始めた時から、いつ仕事を辞めて(会社を
解散)も人様に迷惑をかけないようにと、考え考えやってきた。
だから無借金経営や。そしてダム経営や」
と、幸之助は、王道の経営に徹して、どこまでも美しく、どこまでも
厳しく、自分と向き合って、自己観照していました。

人様に迷惑をかけない経営こそ王道なのです。

『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』

木野 親之著
『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』
   ―この時代をいかに乗り切るか―

5月25日  「経営のコツは」

「経営のコツは、自分が経営者であることを強く自覚すること。
 経営が好きであること。
 辞を低くすること」

 この三つだと教えられました。

 幸之助は、
「智慧は無限、人間は王者、人生はドラマだ」
 と、
「苦労を惜しまぬ人間に不可能はない」
 と言っています。

与えるからこそ人は温かくなる

英国BBC放送が33ヵ国の約四万人を対象に「世界に良い影響を与えている国」として調査をした結果、最上位の評価を得たのが日本でした。日本人の「和」の精神が多くの分野で開花し、高度な技術と豊かな文化が世界に発信され、良い影響を与えていると言えそうです。
 日本人の持つ和の精神は、人・もの・自然と自分とが調和し、ひとつにまとまることを意味します。倫理運動の創始者・丸山敏雄は「和するということは自分がその環境の中に入り、自分が相手に向かって進んでなごむ、睦む、やわらげる」とし、和のもとは愛と説きました。
愛こそが万物を生み、育て、養い、そこに文化と幸福が築かれていくのです。見返りを求めず、自分から無条件に歩み寄って与える時にこそ、人の喜びをわが喜びとする和の世界が広がっていくのです。
       ▽
 福岡県で設計事務所を構えるY社長は、「人の喜びは我が喜び」「与えるから与えられる」を信条とし、多くの方々を喜ばせ、感動を提供しています。
 氏の活動は多岐に渡ります。知人・友人の誕生日にはお祝いのFAXを送り、その枚数は年間一四五〇通に達します。また、地域の良さを伝えるフリーペーパーを毎月一五〇〇〇部発刊。名刺交換した方へのお礼の葉書は欠かさず出し、週一回のモーニングセミナーでは単会の会長として資料を作成し配布します。さらには縁のあった方々の還暦や古希記念誌を編纂して祝賀会を企画するなど、氏の行動は非常に情熱的です。その根底には、人を喜ばせたいという心があります。
 継続的な活動のきっかけとなったのは、敬虔なクリスチャンであった亡き先妻の「未普及地域に教会を建てる」という夢を実現させたことでした。命ある間に建ててやりたいと思った氏は、土地探し、設計、資金づくり等で不休の生活が始まりました。懸命な働きと心ある人たちの助けにより落成しましたが、その時には妻はすでに天に召され、氏は涙に咽んだといいます。
Y氏は経営の根幹として、先に相手を喜ばせることが肝要と捉えます。「継続のコツは、故郷・恩師・友人・親兄弟すべてに感謝することと、常に完全燃焼して活動を楽しむことだ」と語っています。献身的な利他の活動は、ただ人に喜んでもらいたい、お役に立ちたいとの恩返しの念から発したものでした。そこに愛和の世界が広がり、やがて事業面にも反映されたのです。
巨万の富をもち大事業を一世に誇った人は、定めしガリガリで、自分勝手に愛もそっけもなくふるまっただろうなどと思うものがあったら、それこそ大きな見当ちがいである。そうした小物は知らぬ。しかし人に知られるほどの大物は、宗教家や芸術家にも劣らぬ至純の愛情を、その事業に注ぎ、かかわる人々に注いだ。愛和のみが、万事万物を生み、世を進歩させる」
             (『人類の朝光』62頁)
 利己中心の経済から利他中心の経済への転換が、倫理経営の分岐点となるのです。