木野 親之著
『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』
―この時代をいかに乗り切るか―
4月11日 「利益は汗と油の産物」
「君な、利益が出ないのは汗のかき方が足らんのとちがうか」。
幸之助は社会的使命や人間主役の経営を主張すると同時に、
その結果としての利益が出ないのは何らかの問題があると考
えていました。
因縁生起と言いますが、結果には必ず原因と縁があるのです。
社会の要請に応え切れていない、当時の私の努力不足を指摘
し、利益は汗と油の産物だと教えたかったのです。
木野 親之著
『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』
―この時代をいかに乗り切るか―
4月11日 「利益は汗と油の産物」
「君な、利益が出ないのは汗のかき方が足らんのとちがうか」。
幸之助は社会的使命や人間主役の経営を主張すると同時に、
その結果としての利益が出ないのは何らかの問題があると考
えていました。
因縁生起と言いますが、結果には必ず原因と縁があるのです。
社会の要請に応え切れていない、当時の私の努力不足を指摘
し、利益は汗と油の産物だと教えたかったのです。
木野 親之著
『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』
―この時代をいかに乗り切るか―
4月10日 「資源は無尽蔵」
「資源は無尽蔵と考えた方が、気が楽やで、木野君」
あるものがなくなれば、必ず代替え物が発見されてくるものだと、
幸之助は考えていました。
人の智慧は無尽蔵です。
心が無から有を生むのですから。
だから心を清らかに美しくして、「お客様の心に華を咲かせたい」と、
幸之助は念じて経営をしていました。
都内で中学校の校長をしていたY氏は、A中学校への赴任が決まりました。
その学校は荒れていて、まともに授業ができる雰囲気ではありませんでした。不登校の生徒にも、教師がきちんと対応していない状況でした。
山積する問題に、〈大変な学校に赴任してしまった〉と思ったY氏。実は、家庭の中にも問題が生じていたのです。
家族は五人、妻とはほとんど会話がなく、年頃の子供たち三人とも、親子の会話らしい会話はありませんでした。
ある日、倫理を学んでいる知人とばったり出会い、講演会に誘われました。テーマは「よみがえるか家庭」というものでした。
家庭の不和を抱えていたY氏は、講演会に参加しました。参考になることはいくつかありましたが、その中でも、「『ありがとう』の力」という話が印象に残りました。
家に帰ると、妻から「○○さんから電話があった」とつっけんどんに言われました。いつもなら、「うん」や「ああ」と返すところです。Y氏は講演を思い出し、「ありがとう」と返事をしました。
食事の時も、「取り皿をくれるかい?」「はい」「ありがとう」。「お醤油とって」「どうぞ」「ありがとう」と、必ず添えるようにしたY氏。たった一言ですが、この日から夫婦の関係に変化が生じました。少しずつ夫婦の会話が増えてきたのです。
それまでは一方的な言葉の投げかけだったのが、「ありがとう」と受け止めることで、夫婦の心の距離が縮まったのかもしれません。次第に妻の表情が明るくなり、子供たちにも、笑顔が多くなってきました。
もしY氏が、講演の後、「今日は良い話を聞いたぞ。これから『ありがとう』と言えよ」と家族に押しつけていたら、どうなっていたでしょう。会話どころか、家庭の雰囲気はますます暗く、ギスギスしたものになっていたはずです。
良い話を聞いて、それを実際に実践したところから、家族に変化が生まれました。そして、父親の言葉一つが、家族を大きく変えることに驚いたY氏でした。
Y氏が赴任した中学校の雰囲気も、薄皮をはがすように変化していきました。赴任当時は〈どうしたら子供たちが変わるか〉と考えていたY氏ですが、〈まずわれわれ教師が変わらなければいけない〉と、毎週、職員会議を開くようにしました。また、不登校の生徒の家には、Y氏自ら足を運んで声をかけるようにしました。
ほかの先生も、根気よく生徒の話を聞き、アドバイスを送るようになりました。翌年、三年生全員が進学や就職を決めて、無事卒業式を迎えることができたのです。
言葉の力は存外に大きいものです。また、発する人の立場によって、その影響力は変わります。
特に家庭や職場で上の立場の人が発する言葉には、場を一変させるほどの力があります。プラスの言葉で、家庭や職場を明るくするようにしたいものです。
木野 親之著
『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』
―この時代をいかに乗り切るか―
4月9日 「値付けでその会社がわかる」
値付けでその会社がわかるのです。
価格こそ企業の魂であり、商品の魂です。
「新製品の価格決定の時こそ、『利益に対する考え方』『経営方針』
『商品に対する執念』の特訓を受ける最大の試練の場だ」と教えら
れました。
幸之助の要求する適正利益は、常に10パーセントでした。
高くてもいけない。安価でもいけない。すべては適正でなければいけ
ないのです。
十九世紀にイギリスで活躍した劇作家のジョージ・バーナード・ショーは「人間が賢いかどうかは、経験の量によるものではない。その経験をいかに活かすかによるのだ」という言葉を遺しています。
職場には「様々な経験をしているのに、まったく能力が向上しない」という人がいます。一方では、「同様の経験を積みながら、日々着実に向上している」という人もいます。こうした能力の向上の差は、「普段から『経験』をどのように活かそうとしているか」という姿勢にあるといえます。
入社して五年目のEさんは、職場生活に不満を感じるようになりました。その理由は、同期で入社したF君のみが年月を経るごとにキャリアアップし、昇進しているからです。Eさんは職場内でめざましくステップアップしていくF君を、ねたましくさえ思っていたのです。
そんなある日のこと、「自分には実績を挙げるチャンスが与えられていない。チャンスが与えられれば、努力して必ず会社の期待に応えられるはずなのに…」と先輩のK氏に相談しました。Eさんの話をじっくりと聞いていたK氏は、次のような助言をしました。
「チャンスを与えられているというF君は、『一を聞いて十を知る』という言葉が示すように、仕事を単にこなすだけではなく、そこから様々なことを学んで、次の仕事に活かすことを意識して行なっているよ。そうしたプラスアルファの努力の積み重ねが、社内でのチャンスを引き寄せているのだと思うよ。E君のように『もしチャンスが来たら努力をする』ではなくて、『プラスアルファの努力を積んでチャンスを引き寄せている』ところに、F君との力の差があるんじゃないかな」
Eさんは、K氏の助言を聞きながら、入社した頃からF君が会議や仕事の合間に、サッと手帳にメモを取り、それを時々確認している姿を思い出しました。そして、翌日からEさんは小さな手帳を持ち歩き、〈これは大切なこと!〉と感じたことはサッとメモを取り、チャンスのアンテナを張り巡らすようになったのです。困難に遭遇しても〈経験を積むチャンスが巡ってきたぞ!〉と感謝の心持ちで立ち向かうようにもなりました。
成功するにせよ、失敗するにせよ、そこから何かを学び得るという姿勢を磨き高めることが大切です。そうしなければ、自分自身の仕事力を高めることはできないからです。
例えば、失敗をしても、〈何でミスしてしまったのだろうか?〉と、その原因をしっかりと考えて、その後の対応策を把握していれば、二度目に同じ失敗を繰り返す可能性は少なくなります。さらに、仕事力の改善策のための課題ハッキリと見えてくるのです。
成功している時も、その要因を分析することが大切です。謙虚な姿勢を保ちながら、昨日よりも今日の仕事で発展した成果を手に入れることが出来るでしょう。
人に与えられている時間は「一日=二十四時間」と皆平等です。その時、一瞬一瞬をどのように学び、どう活かしていくかで自己は成長していくのです。