物の整理は、こうしたらよいと分かりやすいが、心の整理となると、案外わかりにくい。
病気になった時、人手がなくなった時、事業が行き詰まった時、子どもが言うことをきかない時、妻または夫が家出をした時、愛する人に死に別れた時……、その他いくらでもある。
心が整理できない時には、身のまわりの物を整理していると、
心のほうが整理できてくることもある。乱雑な部屋にいると、心もそのとおりになって、
すっきりとしない。だから「物の整理は心の整理」とも言われるのだが、実際の生活では、
どのように心を整理したらよいのか。
火山の近くに住む人々にどのような心がまえで噴火にそなえているかと聞いてみると、
ほとんどの人が心の整理をしていないのに驚く。
多くは「その時はその時さ」とか「噴火などオレが生きている時には、まあ、ありっこない」とか平然としていたり、活火山のすぐ近くにリゾート地域を開発しようとしていたり、
へんな心の整理をしている向きもある。二、三百年の間をおいて大爆発をした
火山の例もあるのだ。
病気は誰でも嫌であろう。しかし病気にかかる時もある。その時はどういうように心を
整理しているか。歯が一本欠けても困るし、皮膚がすりむけても痛い。足がフラつく、
心臓がおかしい、胃にしこりがある…。健康な時は平気だが、いったん病気にかかると、
かなり動揺するものである。その時、どのように心を整理すればよいのか。これができていない。病院の待合室にいる人々の顔が暗いのは、苦痛や待ち時間の長いためばかりではない。
生活倫理とは、心の整理のことである。倫理といえば、すぐに堅くるしいものと考えたり、
難しいものと思いこんだりされやすいが、心を整理し、整頓することだと見なせば、
これは毎日朝から晩まで必要なことであり、仕事のことは申すに及ばず、食事、
入浴その他にわたって暮らしの根本になることだと容易に理解できよう。
病気にかかっている当人もたいへんだが、その看護にあたっている人は、
なおさら大変だといえよう。そうした場合の心の整理はついているであろうか。
病気のことは、その他の苦難に通ずるといってよい。人が自分の思いどおりにならないという
苦痛があれば、それに対する心の整理をまずはっきりさせることだ。
人を変えさせようとするほうが先なのか。それとも、まず自分の変わるべきところはないかと
研究することが先なのか(必ずしも妥協するとの意味ではない)。
そしてどのように心を整理して臨むのか。
こうした心の整理は、すべての社会生活、経済生活、政治生活、芸術生活に欠くことはできない。もちろん整理された心のとおりに、なかなか実行できないという場合もある。
そこに悩みもまた生ずるのであるし、そうした人々も多いことであろう。
しかしそうした場面にあっての、そのまた心の整理もある。 深く深く、高く高く、
心の整理をはかり、積み重ねてゆく。それがまた人生なのだ。
そうしてとくに死に対する心の整理をはっきりさせるところまで及びたい。
月別アーカイブ: 2015年12月
『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』
木野 親之著
『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』
―この時代をいかに乗り切るか―
12月7日 「自ら断崖の淵に立て」
不景気になると、もうだめだとあきらめる人がいます。
幸之助は、長い人生の中で五度の逆境を体験しています。
「まわりの影響でじわじわと断崖に追い詰められたら、どん
な人間もいい考えは浮かんでこん。断崖の淵に自らの意思
でたつんや」
自らを追い詰めて断崖の淵に立てば、そこから独創性が生
まれてくるのです。
『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』
木野 親之著
『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』
―この時代をいかに乗り切るか―
12月6日 「神が許さん」
幸之助は、共存共栄を信念としていました。
私はファクシミリの世界のシェア―を独占する方法はないかと、
あれこれ真剣に考えていました。しかし、その考え方を知ると、
烈火の如く叱られました。
「自分が独り占めしようとすれば、世間は許すかもしれないが、
神は絶対に許さん」
今でも、「世間は許しても神が許さん」という言葉が心に残って
います。
『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』
木野 親之著
『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』
―この時代をいかに乗り切るか―
12月5日 「トラブルの解決が経営や」
自分の条件だけを考えて、問題を解決すればよいと考えていると、
いつの間にか周囲に対する配慮が足りなくなります。
「問題の解決は、試練の一つと思うこと。
その試練を乗り越えるには、周りの努力が必ずいること。
問題解決のコツは、常日頃から周囲に配慮しておくこと」
幸之助は、トラブルや問題解決の名人でした。
『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』
木野 親之著
『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』
―この時代をいかに乗り切るか―
12月4日 「何のために経営するのか」
「何のために経営するのかと問われれば、それは経営理念を
実現することだ」と幸之助は言っていました。
「儲けることは大事や。それを忘れてはいかん。
しかし儲けが先に来ると、経営はうまくいかないようになっている」
つまり、指導者が志を立てて、理念の実現に向かう過程で
その結果として利益が上がるものです。
経営理念の確立が最も大事です。