毎年春になると、多くの人を悩ませるのが花粉症です。
花粉症は、花粉に対する体のアレルギー反応です。スギやヒノキなどの花粉に体が過剰反応して、体内に入った花粉を出そうとしてくしゃみをしたり、鼻水や涙で洗い流そうとすることから花粉症の症状が出てきます。
その年や地域によって飛散量の違いはありますが、症状の重い人は、風邪でもないのに熱っぽくなったり、気分が憂鬱になったり、不眠を招くこともあります。
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Nさんは、もう十年以上、花粉症に悩まされていました。夜は鼻が詰まってよく眠れず、たびたび目を覚ましてしまいます。日中も、鼻をかみ過ぎては出血し、目もかゆくて仕方がありません。
そのような状況ですから、毎年この時期になると、気持ちが沈みがちになります。仕事にも身が入らず、ミスを連発。休日も出かけるのが億劫になり、杉の木を見ると恨めしく思っていました。
ある日友人と、花粉症の話題になりました。いかに自分の症状がひどくて辛いかを話すと、友人がこう言いました。
「俺も花粉症だけど、君みたいに思ったことはないよ。花粉が飛ぶのは変えられないんだから、嫌っても仕方ないじゃない、花粉症のおかげで、春の訪れを感じることができる。そう思ったほうが楽しく生活できるじゃないか」
確かにそれも一理あると思ったNさん。どのように花粉症を受け止めて生活していくか、そうした心の持ちようも大事だなと思ったのです。
それからは、自分の精神面を鍛えることにして、春という季節や花粉そのものを嫌わないように心がけました。そして〈この時期に飛散する花粉は、大自然の命の営みの一つ〉と捉えるようにして、心を少し切り替えたのです。
その後、症状には劇的な変化は見られないものの、嫌がる気持ちが少なくなるにつれ、Nさんは仕事上のミスが減ってきました。鼻水に悩まされながらも、季節の移ろいを感じて、心豊かに日常を送れるようになっています。
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人は「憂鬱」や「恨めしい」といった不満が続くと、いつしかそれが心の癖となって、物事を素直に受け止めづらくなります。普段ならばまっすぐに受け止められる相手の言葉にさえ、不満に感じ、悪循環に陥ってしまうのです。
自然の営みは、人の力ではどうすることもできません。どうすることもできないなら、憂鬱を溜め込むより、明るく受け止めたいものです。花粉症についても、薬を飲んだり、マスクをするなどの対処をした上で、「嫌わない」生活を心がけましょう。
近年は、自然環境の変化や大気汚染などによって、花粉症の症状が悪化すると言われています。花粉症の増加は、地球から私たちへのメッセージなのかもしれません。改めて、地球の恩恵によって生活ができることへの感謝を向けたいものです。