『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』

木野 親之著
『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』
―この時代をいかに乗り切るか―

6月2日 「自由自在な智慧も出てこない」

「窮屈な枠の中で、窮屈なものの考え方をしていては、
心の働きも鈍くなり、自由自在な智慧も出てこない」
私が松下通信工業株式会社東京営業所長になった時、
いただいた言葉です。

窮地は常にある。それを乗り越えていくところに、経営の
妙味があるのです。
矛盾を矛盾としない、経営の自由度を360度にすれば、
生命の美しい花は咲くのです。

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名字の自覚

私たちは、名字を案外粗末にしているのではなかろうか。

名字は自分の生命のつながりという親祖先からの積み重ねを表すものであるにもかかわらず、まったく無関心であったり、中にはいやな名字だと思っていたりする。

私たちの身体や精神は、自分自身がどこからか材料を仕入れてきてつくったものではなく、親、祖父母、曾祖父母と、代々受け継いで頂いてきたものである。よって名字は自分が勝手につけられず、また法律上も勝手に変えることができない。祖先からの魂と血と、伝統の自覚をうながす貴重なものが、この名字なのである。

どうしてこのような名字になったのかは、すぐに分かるものと、なかなか分からないものとがある。明治八年にすべての国民に名字をつけよとの布告が出され、あわてて家のまわりに小さな石があったので小石とつけたというものがある。牛や馬がいたので、牛田とか馬場とか、その場で決めてしまったというものもあるという。

 

どうしてそういう名字になったか、わけは分からなくても、それをよいように解釈すれば、生活に支えができる。悪山という人がいて、呼ばれるたびにいやな思いをしていた。しかしある漢学者から「それは自分をへりくだって称したものだ。自分から善人ぶるよりも、はるかによい名字である」と言われて、心がすっきりし、人に対して威張らないよう、高ぶらないよう、迷惑をかけないようつとめてきたところ、次第に信用を増して、事業も栄えるようになった。

陰間という人は、かげの間にいるとは何とゆううつなことだろうとおもしろくなかった。ところがある易者から「陰とは静、柔軟などを意味するので、おだやかに暮らしていると必ず財産をたくわえられる」と聞き、怒らずあわてず、心を落ち着けて働いていたところ、実際にそのようになって驚いたという。

こじつけだと非難してはならない。よいように解釈すると、物事はそうなるのである。妙な字のようでも、善意によいように受けて、そのように自覚してゆけば、実生活はそうなるのである。

あまりに姓名がよすぎると、かえって負けてしまい悪くなることがある。よすぎるというのは一方的な言い方だが実際はいい気になり油断したりすることがあるからだ。要は自覚の問題である。養子に入ったり、嫁にいったりして姓が変わると、その家の伝統を受け継ぐ。性格も次第に変わり、健康、不健康の点まで受け継ぐ。そうした家の自覚に立つからである。

ある藤原さんは、自分の祖先は藤原鎌足で、代々続いて支配者であったことが自慢である。何かにつけて古い系図を持ち出して得々と喋る。また始まったと次第に敬遠する人が増えて、ついに孤独で貧しい暮らしに落ちてしまった。これは一種のうぬぼれに依るもので、前にあげた名前負けの例に入るであろう。とにかくまず自分の名字を改めて自覚し直すことである。

(『丸山竹秋選集』より)

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安岡正篤一日一言

緑のオアシス/安岡正篤一日一言0601

要するに、人々が己(おの)れ一人を無力なもの、ごまめの歯ぎしりと思わず、如何(いか)に自分の存在が些細(ささい)なものであっても、それは悉(ことごと)く人々、社会に関連していることを体認して、まず自らを良くし、また自らの周囲を良くし、荒涼(こうりょう)たる世間の砂漠の一隅に緑のオアシスをつくることである。
家庭に良い家風をつくり、職場に良い気風をつくれないような人間どもが集まって、どうして幸福な人類を実現できましょうか。

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『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』

木野 親之著
『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』
―この時代をいかに乗り切るか―

6月1日 「大きなことと、小さなこと」

「木野君、成功する人は日々の些細なことに注意を払い、
基本を遵守するという二つの側面を持っているものだ」
これも幸之助に強く教えられたことの一つです。

仕事に成功するには、小さなことと、大きなことの基本的
な考え方の二つが大切です。
平凡なことを疎かにしたり、小さな事柄を馬鹿にしたりし
ていては、成功は逃げて行ってしまうのです。

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