ルーツを知り伝えていく

Aさんの祖父母の墓は、熊本県にあります。以前、Aさんが九州地方の営業を担当していた頃は、時間を見つけて、月に一度は墓参りをしていました。しかし、担当地域が変わった後は、すっかり足が遠のいていました。

先日、たまたま熊本県内で行なわれた会合に参加することになったAさん。その帰りに、久しぶりに祖父母の墓を訪れました。

近くに住む親族がいないため、祖父母の墓は、五年前から永代供養をして、お寺で管理してもらっています。お寺の担当者に案内してもらい、幅三十センチほどのスペースに安置されている祖父母の位牌に手を合わせました。

ふと、位牌の下を見ると、そこに小さな引き出しがあることに気がつきました。

〈何が入っているのだろう〉とその引き出しを開けると、生前の祖父母の写真とともに、家系図が入っていたのです。初めて目にした家系図に、Aさんは驚きを禁じ得ませんでした。

 

振り返れば十年前、『万人幸福の栞』十三条の「最も大切な、我が命の根元は、両親である」との一節に出合って以来、Aさんは、自身のルーツに関心を持つようになっていました。「祖先や一族のことは叔母が詳しい」と聞いていたものの、遠方のため、訪ねることができずにいました。そのうちに叔母が他界し、頓挫したままになっていたのです。

その家系図には、両親、祖父母、曾祖父母、さらに上の代までの祖先の名前が綴られていました。墓参での思いがけない出合いに、はやる気持ちを抑えつつ帰路に着きました。

数日後、実家の父に、墓参りに出かけて家系図を発見したことを報告しました。父からは、祖父母のきょうだいの人物像や家の歴史の一端を聞くことができました。

また、家紋の意味を初めて知ることもできました。父によれば、Aさんの本家は代々、染物屋だったとのこと。家紋もそのことを彷彿させるような図案だったのです。

 

墓参をきっかけに父とこうした話ができたことを嬉しく思ったAさん。また、この一件以来、祖先に対する思いが変わりました。

おぼろげだった自分のルーツがはっきりすることで、一人ひとりのご先祖様が命を繋いでくれたからこそ、今の自分があるのだという自覚がより深まったのです。

今まで以上に祖先への感謝の思いを深めることができ、〈これだけの命を受け継いでいるのだから、しっかりと生きたい〉という感情が自然に湧いてきたのです。

Aさんは今、複写した家系図に自分たち夫婦と子供たちの名前を書き足し、子孫へと伝えていきたいと考えています。

墓参に出かけたり、仏壇に手を合わせたりすることは、命の本である親祖先への感謝を表わす実践です。また、祖先伝来の命を受け継いでいることを自覚することにもつながります。日常の中で、生かされていることを自覚し、感謝の気持ちを深めていきましょう。

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安岡正篤一日一言

物知り/安岡正篤一日一言0611

物知りというものは勿論(もちろん)結構、場合によっては面白い、或(あ)る種の値打ちもある。
けれども、人間の本質的価値に何ものを加えるものでもない。
況(いわん)や物知りを自慢にするなどというのは、これくらい他愛のないことはない。
この頃は物知り辞典というのが沢山出ております。
又クイズというものが大層流行っておるが、こういうものは人間の知性の遊戯以上の何ものでもない。
おおぜい面を並べて、つまらない問答をして、よくまあ、あんな馬鹿な事を性懲りもなくやれるものだ、と時々思うが、退屈まぎれ、時間つぶし以上にさっぱり値打ちはない。

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『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』

木野 親之著
『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』
―この時代をいかに乗り切るか―

6月11日 「商売の秘訣の一つは即断即決」

商売の秘訣の一つは即断即決、しかし、合わせて三度念を押す
慎重さも必要です。
幸之助は、いつも即断即決していました。
それが出来たのは、いつもその仕事のあるべき姿を求めてブレ
なかったからです。
また、それまで何回も何回も、考えて考えて、決断していたのです。
宇宙の大きな視点と、三度念を押す慎重さこそ商売の秘訣です。

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安岡正篤一日一言

雨後の感/安岡正篤一日一言0610

有感 山崎闇斎(あんさい)

坐憶天公洗世塵
雨過四望更清新
光風斉月今猶在
唯欠胸中酒落人

そぞろに憶(おも)ふ天公 世塵(せじん)を洗ふを
雨過ぎて四望更に清新
光風霽月(せいげつ)今猶(な)ほ在り
ただ缺(か)く胸中洒落(しゃらく)の人

徳川時代の儒学や神道に及ぶ時、山崎闇粛を語らぬ者はないが、大抵は窮屈千万な人の様に思っている。
然し闇斎はそんな人ではなく仲々の豪傑である。
この詩は雨後の感を詠んだものだが、この雨は天が、人間の世の中の塵を洗った感があるというのである。
一雨サーっと過ぎた後、四方の眺めは一段と清新である。
雨の後の青葉をゆるがす風と、塵を一洗した空の月は文字通り光風葬月で、今も在るがさてそんな心の人に至つては当今さっぱり見当らぬ。

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『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』

木野 親之著
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―この時代をいかに乗り切るか―

6月10日 「人を育てるということ」

「人を育てるということが、経営者として何よりも大事な
ことである」
松下幸之助は、モノを創る前に、人を創ると人材教育を
大切にしていました。
人材育成で、大事なことは、仏法の「桜梅桃李」の原理
です。桜は桜、梅は梅です。
個性を伸ばしたとき、創造性が生まれるのです。

*「桜梅桃李」(おうばいとうり)
桜は桜の、梅は梅の、桃は桃の李(すもも)は李の独自
の特徴を生かして、独自のきれいな花を咲かせると言
われています。

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