生きた学問/安岡正篤一日一言1030
すべて学問というものは、根から養分を吸収して、幹が出て、枝が伸びて、それが分かれて小枝、その先端に葉がつき実がなる。
そしてそれが又落ちて、肥料になって、新しく芽を吹いてゆく、というように自然に伸びてゆくべきもの。
自然に伸びていって、それが分裂せずに自ら一つの体系をなしてゆく。…
これでなければ本当の学問ではない。
われわれは先(ま)ず『大学』から始まって、四書五経を教わった。
それがある年齢に達した頃に、自分から面白いなあ、なる程なあと考えるようになる。
最初は与えられたものだが、だんだんそれが生命化して来て、よし、一つ儒教を勉強してみようと今度は自発的に読み出す。
孔子の伝記をやるうちにどうしても孟子をやらねばいかぬ。
今度は荀子(じゅんし)をやらねば気が済まぬ、というようにだんだん枝葉に分かれて来る。
そうすると孫子・呉子(ごし)・韓非子(かんぴし)などというものまで関連して来て、今度はそれに道楽をする。
斯様(かよう)に儒教を研究しながら、年季をかけて道楽していると、自然とあらゆる教学に入って来る。
桃栗三年柿八年と言うが、人間の学問はやはり二十年、三十年と年季をかけて初めて生きた学問になる。
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