年の瀬に感謝を深める

今月の「今週の倫理」のテーマは、〈心を整理する〉です。
年の締めくくりにふさわしいテーマですが、逆に、心が整理されていない状態とは、
どのような場合が考えられるでしょう、
例えば、病気になった時や、事業上でトラブルが起こると、心が不安に満たされ、動揺します。
こうした状態は心が整理されているとはいえないでしょう。また、社員が成果を上げられない、
家族が病気やケガに見舞われるなど、平安な状態を崩すような出来事が起きると、
多くの人は心が整理されていない状態になるものです。
 そうした出来事が起こらなければいいのですが、人が生きていれば、平安ばかりでは
済まされません。まして経営者であれば、背負うものが大きい分、なおさらでしょう。
 ある経営者は、かつてはちょっとしたことでも不安になり、夜も眠れないことが度々
あったそうです。その後、倫理法人会で学び、実践するようになってからは、
夜眠れないということがなくなった、と語ります。
もちろん何も起こらなくなったわけではありません。むしろ、以前よりも厳しい状態に
直面することもありました。それでも、夜眠れたのは、心が整理できていたからに他なりません。では、その変化はどのようにもたらされたのでしょうか。
 一つには、そうした招かざる状況をどう受け止めるか、ということがあります。
そのベースにあるのは、純粋倫理の苦難観です。
倫理経営の拠り所である純粋倫理では、「眼前に起こる厳しい状況は、その人を苦しめるために
起きているのではない」と考えます。その真の原因を、当人の心のあり方にまで求めつつ、
「苦難は、その人をより善くし、より向上させるために起こる」と捉えるのです。
ですから、苦難に見舞われても、自らの心の生活を省みつつ、しっかりとその原因と意味を
捉えて、喜んで受け止めることができるのです。
 いま一つは、感謝と報恩の心です。こうして事業を継続できるのは、お客様、家族、社員、
取引先など、実に多くの人たちの支えがあるからです。更には、命があるのは、
親祖先あってのことです。
こうした日頃は見逃してしまいがちなことを、当たり前のものではなく「有難いこと」
として感謝を深め、〈その恩に報いることが自分の使命である〉と、受け止めることが
大切なのです。
 とりわけて、恐れ、怒り、悲しみ、ねたみ、不足不満の心、それはただに、一切の病気の
原因になっているだけでない。生活を不幸にし、事業を不振にするもとであり、己の不幸を
まねく根本原因であることを知らぬ。    (『万人幸福の栞』)
 まもなく新しい年を迎えます。今年一年の苦難を含めた幾多の出来事のお陰で、自分も、わが社も、より善くなれた、また、多くのご恩に支えられてきた、と深く感謝し、心の整理を済ませて、限りない希望を持って新しい年を迎えようではありませんか。