好き嫌いは心の癖の反映

知人に勧められて倫理法人会に入会したFさん。まだ半年ですが、毎週の
経営者モーニングセミナー(以下MS)に参加すると、普段の生活では得ることができない
様々な「気づき」があります。そして、すぐにできそうなことは、周りからアドバイスを
もらいながら行動に移し、仕事や家庭で活かしています。
 ある日のことです。いつものようにMSに参加すると、講師から次のような質問がありました。
「皆さん、食べ物の好き嫌いはありませんか? 好き嫌いの原因は、食べ物ではなく、
自分自身にあります。自分の心が決めているのです。その心は人の好き嫌いにもつながります」
その日の講師は、保育園の経営者でした。長年、子供と接してきた経験からの話でした。
Fさんは〈なぜ食べ物の好き嫌いが、人の好き嫌いに関係するのだろう?〉と疑問に
感じましたが、良い機会だと思い、自分自身のことを振り返ってみたのです。
Fさんにはどうしても口にすることができない食べ物が二つありました。それはキュウリと
スイカです。その背景には、少年時代の体験があります。
カブトムシ採集が大好きだったFさん、そのカブトムシを飼う時のエサはキュウリと
スイカでした。ある夏の日、暑さでキュウリとスイカを腐らせてしまい、その匂いを嗅いで、
Fさんは気分が悪くなりました。その日以来、食べることができなくなったのです。
 しかし、講師から「食べ物の好き嫌いは、人の好き嫌いにつながる」と聞いたことが
気になります。
そこで講師に倫理指導を受けました。Fさんがこれまでの経緯を話すと、講師から「Fさん、
あなたには二つの癖がありますね」と指摘されたのです。
「物事を第一印象で決めつける癖と、過去にとらわれる癖です。食べ物に限らず、
人との接し方も同じではないですか?」
たしかに、Fさんには思い当たることがありました。初めて会った人に対して、
〈良い人そうだな〉〈このタイプは合わない〉と判断し、苦手な人とは積極的に関わろうと
しませんでした。また、過去に嫌な思いをさせられた相手や、言い争いをした相手には、
いつまでも悪い印象を持っていました。
〈なるほど、こういうところに二つのつながりがあるかもしれない〉と考えたFさん。
家への帰路で、キュウリとスイカを食べてみようと思い立ちました。そして、
すぐに実行するべく、近所のスーパーに立ち寄り、キュウリとスイカを購入しました。
生まれて初めてのことでした。
 数十年ぶりに口にしたキュウリとスイカは、頭の中にあるイメージとは違い、みずみずしく、
おいしく感じました。むしろ、〈この味を知らなかったのは、何十年も損をした〉とさえ感
じたのです。
 この体験を通じて、人との接し方も見直したFさん。苦手な人にも①先手で声かけ②相手の目を
見る③話をよく聴く、これらを一所懸命実践しているところです。