長生きする企業のヒント

人生の大先輩に学ぶべきことはたくさんあります。
異業種の人たちが集まる研修会で、若い講師が初めて研修を担当しました。大勢の参加者の中、最前列で
終始うなずいて聞いていたのが、百歳のご老人でした。
終了後、講師はご老人に、「内容はご理解いただけましたか?」と尋ねました。すると、「耳が遠くてよく
聞こえませんでした」とサラリと答えました。そして、「ただ、あなたが一所懸命話されている、そのお気持ちが伝わってきました」と頭を下げられたのです。
若い講師は、一番前でうなずいて聞いてくれたご老人のお陰で、プレッシャーの中でも話を進めることが
できたのでした。そして、包み込むような人柄に感銘を受け、〈自分もこの方のように年を取りたい〉
と思ったのです。
同じ研修会には、九十八歳のベテラン講師がいます。ある日の研修後、家族の話になりました。講師は夫を
三十年以上前に亡くしています。ある参加者が、ご主人の戒名は何かと尋ねると、講師は夫だけではなく、父母の戒名もスラスラと答えました。周りが驚いていると、「でも、生きている人のお名前はすぐ忘れますが…」
と冗談を交えて、笑いが起きました。
亡き家族を思う日頃の実践ぶりと、場を和ませる応答に、そこにいる皆が感服したそうです。
また、七十歳を過ぎて倫理を学び始めたある会員は、人工透析の治療を受け、歩行も困難な状態でした。
九十歳を超えてから倫理指導を受け、妻への感謝が足りなかったことに気づきました。そして妻へ、
労いの言葉をかけることを実践したのです。
「一緒にいる年数が長いから、労うことがあり過ぎて、病気どころではなくなってしまった」と氏は語ります。やがて、自分の足で歩けるまでに回復したのです。

皆さんの周りにも、こうした年長の方がいらっしゃるでしょう。年齢を重ねてなお魅力を増し、周囲も
明るくするご老人には、いくつかの共通点があります。
①思ったことをあっさりと言う。
②腹を立てずに、気が長い。
③思いやりがある。
④何でもやってみる意欲を持つ。
⑤朝早く起き、夜はさっさと寝る。
⑥無茶食い、無茶遊びをしない。
⑦喜んでよく働く。
では、これらの項目を企業に当てはめるとどうなるでしょう。
①何でも話せる社内の空気。
②長期の展望をもつ。
③社員を大切にする会社。
④改善すべきはすぐに改善する。
⑤出足、引き足が早い。
⑥無駄を省き、身の丈にあった経営。
⑦喜んで働く集団をつくる。
こうしてみると、長寿者の生き方はそのまま、長寿企業の在り方にも重なるのではないでしょうか。
「企業は人なり」というように、経営者の生き様はそのまま組織に反映します。高齢者の生き方から学び、
日々の指針とすることで、長期の発展が実現し、その企業にしか出せない味が醸し出されてくるのでしょう。