短所を多面的に眺めてみる

人生いろいろ 男もいろいろ

これは、演歌・歌謡曲歌手として著名な故・島倉千代子の代表作の一つ「人生いろいろ」のサビの一節です。この歌詞にはおそらく、「人はみな違っていて当たり前、人それぞれの生き方がある」という意味が込められているのではないでしょうか。

人はそれぞれ十人十色、多種多様な生き物です。人種・文化・宗教・国柄も違えば、同じ日本人でも、性別・年代・生い立ち・容姿・学歴・思想・職業・経験知などが違うのですから、ある意味、違って当然です。

他人だけではなく、一人の人間もまた様々な面を持っています。 日頃は引っ込み思案で、いつも誰かの陰に隠れていた人が、外国人とは片言の英語で堂々と話す場面に遭遇して舌を巻く…といったことが往々にしてあるものです。

「あんな人だとは思わなかった」「常識を疑う」などと言って、相手が、自分の持っているイメージと違ったことをすると腹を立てる人がいますが、その「常識」も、考えてみれば人それぞれ微妙に違うのでしょう。自分自身もまた、倫理的であったり、倫理的ではない面もあるというのが、多くの人の実際ではないでしょうか。

とにかく人間とは複雑極まりない生き物だとすれば、一面的に捉えてとやかく言うよりも、できるだけ多面的に捉えて、あるがままを受け入れた方が素直だといえるでしょう。まさに多面的なところに深みや味わいがあり、思うようにならないからこそ、かえって面白いのではないでしょうか。

純粋倫理の学びに「全個皆完(ぜんこかいかん)」という、人・物・自然・森羅万象すべてに対する見方や考え方の原理原則があります。

これはその名の通り、「すべての個は皆、そのままの姿で完全である」ということです。今ある個の姿は、そうなる理由があってそうなっていると考えれば、現状のようになるのは当然であり、自然です。単純にいえば「これがよい」という見方・考え方です。

 

これを人に応用するとどうなるでしょう。たとえば仕事のスピードが遅いことについて、「どうして早くできないのか!」と腹を立て、叱責・排除しようとするのは「短所矯正」です。短所矯正も時には必要でしょうが、実際に短所が矯正される効果は薄く、むしろ反発されるデメリットのほうが大きいでしょう。

そこで、〈彼がこうなるのには理由があるのだから〉と受け止め、短所という一面を、多面的に見てみるとどうなるでしょう。

短所は、反対から見ると長所となります。「愚図ではなく慎重」なのです。その慎重さを活かした「長所伸展」で長所を伸ばす方が容易(たやす)く、効果も期待できます。互いの人間関係も、さらに明るく、しなやかなものとなるでしょう。

経営者や上司が、長所伸展的な見方・考え方へと変われば、会社全体もしなやかで明るい環境へと舵を切るはずです。

人や物事を多面的に見る自分になる努力をしたいものです。