あるパン職人の悩み

某地方都市の駅前で、パン屋を営んでいるDさんには、二つの悩みがありました。

一つは、従業員がなかなか定着しないことでした。新規採用し、せっかく働いてもらっても、数カ月もすると「辞めさせてください」と言いに来ます。中には三日で辞めてしまう人もいました。

もう一つは、店の売り上げが落ちたことです。二年前、駅前に大きな商業施設ができたことで、人の流れが変わりました。Dさんのお店は昔からの常連客が多く、致命的な影響はなかったものの、前年より少しずつ売り上げが落ちていたのです。

これら二つのことを思うと、先々への不安や心配が募り、よく眠れないことがありました。〈このままでは自分の体を壊してしまう〉と思い、以前から入会していた倫理法人会で、倫理指導を受けることにしたのです。

これまでの経過を説明し、二つの悩みを打ち明けると、講師から次のように言われました。

 

「お話はよくわかりました。理路整然と事情を説明する姿に感心しました。仕事への熱意も感じました。しかし、必要以上の言葉を発しないことで、周囲から、コミュニケーションが取りづらいと思われているのではないですか」

たしかにDさんは口数が多い方ではありません。むしろ職人気質で、寡黙なタイプでした。従業員には最低限の指示をするだけで、「今日は暑いね」といった世間話さえしたことがありませんでした。

そのことを告げると、講師から、「Dさんのほうから声をかけてみてください。人にも、物にもです。物事がスムーズに運ぶきっかけになるかもしれないですよ」と言われました。

〈自分にできるだろうか〉と思ったAさんでしたが、店に帰ると、人や物にひと声かける実践を始めてみたのです。

従業員に対しては、「○○さん、おはよう」と、名前を呼んでから挨拶をするようにしました。Dさんの姿に、従業員たちは驚きましたが、そのことが契機となり、少しずつ会話が弾む場面が増えていきました。職場内の雰囲気は以前より明るくなりました。

物への実践としては、「美味しいパンになるように」と心を込めながら生地をこね、「今日もありがとう」と口に出しながら後始末をしました。火や水、酵母や塩、麺棒やボウルなど、あらゆる物に「よろしく」と声をかけていきました。

そのような実践を始めてから数カ月後、突然、地元のタウン誌から取材依頼の申し出がありました。

「地域密着のパン屋さん!」という記事でお店が紹介されたのです。そのタウン誌が発行されてからは、新規のお客様が増え、売り上げが上昇していきました。従業員の退職も少なくなっていきました。

自分一人の力ではなく、働いてくれる人や、さまざまな物によって店が成り立っていることに気づいたDさん。今回の出来事で、周囲の人や物への感謝が深まり、「ありがとうございます」が口癖になっている今日この頃です。

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