思い通りにならないことが多い世の中ですが、自分の心の向け方や捉え方を変えると、環境が大きく変わる場合があります。
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夫と同じ職場で働いていたUさんは、認知症の母親の介護をきっかけに仕事を辞め、夫婦で実家へ戻ってきました。夫はなかなか仕事が見つからず、介護の手伝いも当てにならないため、Uさんは、一人で介護を抱え込むことになりました。夫への失望や不満が募る中で夫婦は離婚し、Uさんは事業を立ち上げました。
その後、知人の紹介で倫理法人会に入会し、1年後、富士高原研修所で、2泊3日のセミナーを受講する機会がありました。
セミナー初日、「親への思いを深める」ことをテーマとした講習がありました。実は、Uさんはかつて、父のことを嫌っていました。〈顔も見たくない、孫も抱かせたくない〉と無視し続ける中で、父は脳溢血で亡くなったのです。
生前の父への申し訳なさから、Uさんは長年、自分を責めていました。母の介護をしようと思ったのも、親不孝を続けてきた両親への悔恨からです。
セミナーに来る前にも、倫理法人会の講師から、父親との関係改善を促されたばかりでした。「亡き父へハガキを書いて仏壇に供える」という実践を100日続けたものの、自分があまりにも父について知らないこと、また、知ろうともしていなかったことに気づかされ、落ち込む中でのセミナー受講だったのです。
セミナー中じっと目を閉じていると、笑顔の父がまぶたに浮かびました。「もうええで」という父の声が聞こえたようで、〈私は許されたんだ〉と思えました。
さらに二日目、三日目と学ぶうちに、〈父は私のことを許すも許さないもなく、ずっと愛してくれていたんだ〉〈自分を許してないのは自分自身なんだ〉という思いに至ったのです。
〈これまで私は「父に喜んでもらえること」を軸に動いていた。でも、父が私に望んでいるのは「娘が幸せになること」ではないか。誰かと喜びや悲しみを共有し、支え合いながら生きていくことこそ、父が望んでいることではないか〉
そう確信したUさんは、勇気を出して、離婚した夫に会いに行きました。そして、これまでの自分勝手な思い込みやわがままな行動を率直に詫びたのです。
そこから雪解けしたかのようにわだかまりがほぐれ、夫との復縁が決まったのです。別々の人生を歩むという選択をしてから、4年目のことでした。
自分本位の行動、独りよがりの考えで自分像を決めつけていたUさん。その心の向け方が、生活全般に影響を及ぼすことにようやく気づくことができたのです。
Uさんは今、「夫婦」という、わが身を映す鏡を通じて、自己を省みる機会が増えたように感じています。「鏡の中の自分が、いつもピカピカの笑顔でいられるように、輝いて生きていきたい」とUさんは願っています。
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