朝の思索を深める

8月も、残すところあと僅かとなりました。親世代にとって、夏のノスタルジックな思い出の一つに、朝の「ラジオ体操」があります。

現在では、ラジオ体操を開催しない地域も増えているようですが、かつての夏休みといえば、全国津々浦々で早朝の「ラジオ体操」が行なわれていました。〈夏休みくらいゆっくり寝ていたい〉と眠い目をこすりながらも、首からカードをぶら下げて参加した記憶を持つ人も多いでしょう。

この夏休みのラジオ体操という取り組みは、健康な体躯を養うことを主眼に置きながらも、長期の休みで、子供たちが(または親も含めて)、怠惰な生活に陥らぬよう、早起きを習慣づけるために行なわれてきたといえます。

遊びといえば外遊びが中心だった当時は、ラジオ体操のために早起きをした子供たちは、夜は早々に眠くなり、その結果、早く寝ることになります。社会全体で、そうした早寝早起きの習慣を後押ししていたのかもしれません。

翻って、倫理法人会が主催する週一回の「経営者モーニングセミナー」も、開催目的として「朝型の生活習慣の体得」を掲げています。その点では、往年のラジオ体操制度と、一脈通じるものがあるでしょう。かつて、ラジオ体操に参加していた少年少女が、今は毎週、全国のモーニングセミナーに通っているといえます。

なぜ倫理法人会では、朝型生活の体得を奨励するのでしょうか。

日本では戦後、伝統的な価値観や古くからの生活習慣を打ち消してしまいかねないような教育がなされてきました。

その国の生活習慣は、風土や文化と切っても切り離せません。そこから導き出された生活習慣が、また新たな文化を生むものです。

そうした古人の叡智、古来の習慣を検討して、再度ふるいにかけ、良いものを継承しようと提唱しているのが倫理法人会です。その一つが、朝型の生活リズムだというわけです。

 

農耕民族といわれる日本人は、朝は自ら早く起きて働き、夜は安らかに休んで翌日の働きを一段と活発にさせる、朝型の生活習慣を尊んできました。科学が発達する以前から、朝の効用や活用法を体感把握して、生活習慣に落とし込んできました。

それは「早起きは三文の得」という諺にあるように、朝の黎明(れいめい)時こそ、仕事や学業をする最適な時間帯であることを経験的に知っていたからでしょう。

「黎明の澄んだ空気の中で思索に耽(ふけ)ることで、建設的で前向きな気づきが与えられた」という朝の効用は、試してみれば誰にでもわかります。人が成長する上で、朝の思索のひと時は、判断力や決断力の源泉となります。現代人は、その貴重なトレーニングの機会を、夜型生活で自ら放棄しているともいえます。

〈まだ寝ていたい〉という我欲を捨て、モーニングセミナーで学び、思索を深めて難局を乗り切り、さらなる成長を遂げましょう。