日本における経済状況は総じて振るわず、頼みの個人消費も落ち込み、関係者は悲鳴をあげている状態です。
社会的・経済的に暗雲が立ち込めると、多くの人が物事を悲観的に見る傾向があります。そのような時こそ勇気を持って一歩を踏み出し、流れや気分を変えて前進することが大切です。
大阪商人の間では、昔から「不景気になると、寄席や喜劇が流行る」といわれます。その意は「泣いている暇があったら、笑ろてこませ」ということです。
『元気をもらった一言』(PHP研究所編)という本があります。その中に「つらいときこそ笑っていたい」という言葉が紹介されています。有限会社オフィス楽笑(らくしょう)・田中幸男代表のエピソードです。
六十年前から聞いていた父親の言葉が、今も氏の生き方の指針となっているといいます。「いつも笑顔で生きよ。笑顔でいると知らず知らずのうちに友が増え、笑えば笑いが笑いを連れてくる。何があっても笑ってなはれや、怒ったら損しまっせ。笑ってたら福の神さんに会えまっせ。そんな暗い顔せんと、勇気も元気も出して笑ってみなはれ。世の中の風景が変わりまっせ」というものです。
そして「知恵とお金は上手に使いなはれ。失敗を恐れず、失敗から何か大きな哲学を学ぼう。泣いて暮らすのも一生、笑って過ごすのも一生、同じ過ごすなら笑って楽しく過ごそう」と、いつも言い聞かされて氏は育ったといいます。
機嫌がよい時は、笑いは自然に「出る」ものですが、そうでない時に「出す」笑顔は、自身や周囲を元気づける力となります。
I氏は先日、仕事で米国へ行きました。ロサンゼルス国際空港に降り立つと、入国審査が物々しかったそうです。両手の指紋を取り、顔写真を撮り、帰国の際の出国審査も厳重な検査があったのです。
現在、米国内の各空港では厳戒態勢が敷かれ、チェックが一段と厳しく執り行なわれているとのこと。しかしピリピリとした中にあって、時折、係官から出る笑顔に、思わずホッとしたI氏です。調べられる側は、どうしても不機嫌さと緊張が増すものですが、そんな中で係官が浮かべる笑顔に救われる思いがしたのです。
二○○一年九月十一日に起こった「アメリカ同時多発テロ事件」は、多くの犠牲者を出しました。事件からまだ二週間も経っていなかったときのこと。現場で瓦礫の撤去や遺体の捜索が行なわれている最中、現場で陣頭指揮を取っていたのがニューヨーク市長のジュリアーニ氏(当時)です。
彼は意外な行動をとりました。土曜深夜の人気お笑い番組に出演して、「笑っていいんだ。みんな笑おうよ」と視聴者に呼びかけたのです。「笑って元気をつけて、元の日常生活を取り戻そう。それがテロと戦うことになるのだ」と語ったのです。
人が人らしく生きていく上で、笑いがいかに自分や周囲に元気と勇気を与えてくれるか、それは計り知れないものがあります。苦しい時こそ、かけがえのない希望への推進力となっていくことさえあります。笑いは生活の活力源であり、「笑いは心の太陽」です。勇気と希望を得るために、笑いや笑顔を日々の柱としていきましょう