自己革新によって「なでしこ力」を体得

今月の十三日、天皇・皇后両陛下主催による「秋の園遊会」が赤坂御苑で催されました。最も注目を集めたのは、七月のサッカー女子W杯で優勝し、また九月のロンドン五輪アジア最終予選で切符を獲得した、「なでしこジャパン」の佐々木則夫監督と澤穂希主将でした。
 一連の「なでしこ」の快挙は、まず澤主将の活躍が挙げられますが、忘れてならないのは、W杯前に選手から「自分たちのためではなく、監督のためにメダルを取りに行く」と選手たちが言うほどの信頼関係を築き上げた、佐々木監督のリーダーシップぶりです。
 追い込まれたゲームの展開にあっても、常に選手は堂々と戦っていました。その裏には、監督のどのような指導があったのでしょうか。
 佐々木監督の標榜する組織形態は、トップダウンの指揮系統ではありません。チームの主役はあくまでも選手であり、監督は「脇役」「アドバイザー」「パートナー」として機能するフラット方式なのです。
(児玉光雄『「なでしこ」を世界一にした魔法のことば』参照)
 氏は選手の目線にまで降りていき、選手の心の中に自分から入っていきます。しかし、ただ優しく接するだけでなく、選手の持てる能力を最大限に発揮させるために、これまで以上に激しい練習で追い込みます。過去にどれだけの実績があろうと、今現在のコンディションを見てメンバーを選出するサバイバル方式を取り入れ、メンバーに対する優しさと厳しさのバランスを兼ね備えています。
 各メンバーがイキイキと力を発揮する上質な信頼関係を生んだ、この「フラット方式」。このシステムを作るために佐々木監督が採った方策には、以下のような項目があります。①メンバーの意向を聞きながら、密なコミュニケーションを維持する。②長所を見つけては褒め、選手のモチベーションを上げる。③他愛のない雑談でよいので、機会を見つけてはコミュニケーションを頻繁に交わす。
 これらの項目は、一見すると誰にでもできそうな内容ですが、これまでトップダウン方式やワンマン方式を行なってきたリーダーにとって、メンバー(社員)が主役となるフラット方式は手を出しにくいものといえるでしょう。しかし、これまでの自分を変えるには、何度も何度も繰り返し実践する以外に、不慣れの解消法はないのです。
 こうした不慣れを克服するために、新たな自分をつくる実践の場を提供するのが全国倫理法人会です。そしてその入門の場となる実践道場が、「経営者モーニングセミナー(MS)」です。MSに受身で参加するのではなく、各種の係に携わることが自己革新につながります。受付係や会場案内役として参加者に声を掛け、また進行や各種リーダーとなって毎週お世話役に徹する。このお世話役の繰り返しが、いつしか自己を変革していきます。
 そして、自己革新の上級編といえるのが企業を訪問しての普及活動です。見知らぬ相手に対する活動こそ、自分自身を変える最良の実践なのです。前述のように、これまでの自分を変え、新たな境地を得ようとするには、これまでと同じことをやっていたのではラチがあきません。もしも変化・変身を遂げたいのであれば、それなりの覚悟と行動が求められて当たり前なのです。世に「今の自分を変えたい」と思う人は多くいます。そう思うならば、変化を形に表わすのです。その先に佐々木監督が手がけた「なでしこ」のような、劇的な変貌が待っているはずです。