喜んで心を配る働きがお客様の感動を呼ぶ

『職場の教養』のテーマは「溌剌とした仕事ぶり」であり、二十二日は「心を配る」です。この二篇の内容には、共通するものがあります。
「溌剌とした仕事ぶり」では、「一人の挨拶や仕事ぶりが周囲の先輩や同僚に自然と影響を与え、職場が溌剌とした雰囲気に変わるものである」として、基本的かつ必要な起居動作について記されています。
「心を配る」では、「明るく心を配れる人は、周囲から喜ばれている」との内容で、心配りの大切さをポイントとして指摘しています。
A氏が出張した際に利用したホテルでの出来事です。二日連続の出張で、翌日は移動することになっていました。移動に新幹線を利用することもできますが、ローカル線を利用しようと考えていました。
 出発時間と到着時間を調べるために、ホテルのフロント係に「JRの時刻表を貸してください」と依頼。A氏はその時間をメモするために、手帳とペンを取り出して時刻表を待っていました。
すると「お待たせいたしました」と差し出された時刻表と共に、なんとメモ用紙とペンが用意されているではありませんか。これを見たA氏は、大きな感動を覚えました。〈お客様は必ず時間をメモするだろう〉というフロント係の心配りに対する感動です。
翌日も別のホテルで感動的なことが起きました。その日は、得意先とホテルでの待ち合わせでした。フロントでチェックインを済ませたA氏が「どこで待とうか」とロビーを見回していると、フロント係が「お客様、どうなさいましたか?」と聞いてきました。「待ち合わせをしようと思いまして」と言うと、「あちらの場所ですと正面玄関がよく見えます。お掛けになってお待ちになられてはいかがでしょう」と案内をしてくれたのです。
A氏は「感動的な応対に接し、自分の気持ちまで清々しくなって、二日間とも仕事が順調に進んだ」と周囲に語ったようです。
 どの業種においても、お客様に満足を与えることは、事業商売の基本中の基本です。社長を筆頭に、全社員が「常にお客様に満足を」という信条のもとに仕事に携わることで、冒頭に記した「溌剌とした仕事」および「心配り」に繋がるのです。
 倫理研究所理事長・丸山敏秋編著の『倫理経営原典』に、「喜んで仕事をすれば事はスラスラ運ぶ―「喜ぶ」ということは、目の前に起こった事に、明るい心の光を投げかけることである。出会ったものに、温かい心のうるおいを注ぎかける事である。(中略)喜んで仕事にかかると、機械に油をさしたように物事がすらすらと運ぶ。喜んで人に応接すると、難しいことでも、すらすらと片づく」とあります。
まずは経営者自身が仕事に喜んで取り組み、社員やお客様に対して温かく潤いの心を持つことです。そこから自らの企業が喜働集団となり、「顧客満足度」を高めることにつながり得るでしょう。