鹿児島市内で食品スーパー九店舗を経営するA社長。昭和五十四年の社長就任以来、これまでにない業績を昨年十二月に達成することができました。
A社長のこれまでの経営戦略の主眼は、チラシ広告による特売の宣伝や、ローカルFMラジオを利用した宣伝といった、外に向けての情報発信でした。
お盆休みや年末商戦、そして大型連休には連日ラジオによる宣伝をすることで、一日平均二千名の来客数アップにつながり、一日の平均来客数は一万名にまで達しました。しかし結局は宣伝期間のみの繁盛であり、一過性のものとして終わっていました。
これまでは何の疑いもなく、「地域に根ざした食品スーパーが生き残るための努力はこれしかない」という思いで懸命に取り組んでいたA氏でした。それが倫理法人会を通じて、経営には変えてはならない事柄と、変えなければならない事柄があることを知りました。そして、これまで自分がやってきたことは、実は変えなければならない手法やテクニックに頼った経営ではなかったかと気づかされたのです。
変えてはならないブレないものを身につけなければ、大型店進出が進むこの時代には生き残れないと意を固め、まずは元気な挨拶をA社長自らが実践しました。
社員・パートの女性たちに、朝から元気のよい挨拶を実践しました。開店と同時に社員と共に赤いハッピを身にまとい、お客様に対して「いらっしゃいませ!」「ありがとうございました!」と大きな声で挨拶することで、いつの間にか元気な挨拶が評判となるスーパーに変わっていったのです。
年の瀬も迫った十二月三十日、A社長はあることに気づきます。例年、年末は最低でも一時間に一本のクレーム電話が入る時期なのに、今年はまったく無いのです。担当部長のほうに集中的に入っているのではと思い尋ねてみると、やはり一本のクレームも入っていないということでした。
そして迎えた新年、年末実績が確認されました。9店舗中8店舗が昨年実績を上回り、来客数では一〇五・一%増の約27万人の来客(鹿児島市人口の半数)となりました。
このような実績が残せた要因は、販売戦略や広告活動が大きく影響しているといえますが、最大の要因はトップの率先垂範の実践とスタッフのお客様に対する姿勢、態そして心が変わったからだといえま。
度、す「あいさつは誠の先手」と申します。(中略)先手、それはトリックや、さぐりや、用心の手ではありません。思いやりの、親切の、敬愛の先手、これはまず挨拶からです。挨拶を、朗らかに美しくかわしましょう。これが、一家の生活の、一日の仕事の、まごころの先手。今日という二度とこない良き日に、燃えさかる命をります。
吹き込む第一手であ(『清き耳』丸山敏雄著)
真心のこもった挨拶は、あらゆる環境を一変させる妙法です。先手で明るく元気な挨拶を心がけたいものです。