やなせたかし氏〈93歳〉原作のアニメ「アン
パンマン」は、子供たちがテレビに釘づけになる
ようなヒーローの一人です。
その主題歌「アンパンマンマーチ」は、誰もが
勇気と希望を得られる歌としても有名です。
東日本大震災発生の三日後、ある地元ラジオ番
組に視聴者からこの歌へのリクエストがありま
した。さっそくラジオ局で放送したところ、多く
の避難場所では子供たちがラジオに合わせて大
合唱を始め、大人たちも涙を流して感動したとい
います。それからラジオ局では、連日この歌を流
し続けました。
「アンパンマンマーチ」の歌詞は、原作者のやな
せ氏自身が作ったものです。自身の人生における
戦争体験や、その他の様々な辛い経験の中から得
たものが集約されています。
また、このアニメのヒーローである「アンパン
マン」は、困っている人や悲しんでいる人に、自
分の顔であるアンパンをちぎって食べさせ、元気
になってもらうという設定となっています。
当初は世の親たちから「残酷だ!」と大不評だ
ったようですが、「捨て身、献身の心なくして、
正義は行なえない」という確固たる信念を含んだ
表現を氏は貫きました。徐々に共感が得られるよ
うになって、子供たちの不動のヒーローになった
のです。
作者自身は明言していませんが、やなせ氏の二
歳下の弟である千尋さんは、京都帝国大学に進学
し、海軍の特攻隊である人間魚雷「回天」の乗組
員に志願しています。そしてフィリピン沖で散華
しています。こうした肉親の存在は、正義の味方
「アンパンマン」を世に送り出す上で、作者の心
の大きな柱になっていると想像できます。
「アンパンマン」のアニメ・歌詞からは、私たち
に強く訴えるものを非常に感じます。やなせ氏の
経験をベースにした内容が、私たちの機微に触れ
るからでしょう。それは何より氏の姿勢に一本通
っているからだといえます。
やなせ氏は人生の意味について「人生最大の喜
びは何か?それはつまるところ、人を喜ばせるこ
とだと思った。人生は、喜ばせごっこだと気づい
たとき、とても気が楽になった」と語っています。
そして「ぼくらはみんな、それぞれ違う思い出
を持っている。そして、なるべくよい思い出を作
りたいと思って人生を生きる」とも表現していま
す。「人生の最大の喜びは人を喜ばせることであ
る」という信念的な帰結が、詞のモチーフになっ
ているようです。
経営者は様々な業種・業態の中を生きています。
各人が苦労や責任を背負って日々を過ごしてい
ます。純粋倫理の実践は、そのような経営者の皆
さんの「よい思い出づくり」に力を発揮します。
必要なのは「人を喜ばせること」です。人を喜ば
せれば、自分が喜べる。お客様を喜ばせれば、自
分や社員が喜べる。それが「よい思い出」につな
がっていきます。
アンパンマンの歌が被災者に勇気を与えたよ
うに、私たち経営者は周囲に喜びを提供していき
ましょう。「日本創生」を目指す私たち倫理法人
会は、日本に生きる人たちの思いや願いを常に忘
れず、皆が安心して暮らせる「日本」であるよう、
それぞれが置かれた立場で、「人を喜ばせること」
を確認しましょう。そして「愛と勇気」を胸に、
熱い心で今を邁進していきましょう。