倫理法人会の会員は、様々な問題に直面し
た際には純粋倫理の学びを実践に移し、そし
て前進しています。
多くの問題の中でも、特に経営者が頭を悩
ませるのが「後継者問題」です。現在、倫理
法人会では、平成九年の千葉県を皮切りに、
新潟県、埼玉県、東京都、愛知県、石川県、
沖縄県の七都県にて、企業後継者を対象とし
た後継者倫理塾を開催しています。
その目的は以下の3点です。
①創業者の精神を引き継ぎ、倫理経営を正しく
理解・実践して、健全な企業経営を推進する
後継者の育成
②倫理法人会活動を推進する後継者の育成
③倫理実践によって、人間力向上をはかり、地
域発展に寄与する人材の養成
ここでは一年間、同じ境遇の後継者たちが
共に学び、汗を流し、感動を共有しながら成
長するために頑張っています。その運営に携
わるスタッフも、何とか塾生に成長してほし
いとの思いで、魂を込めた指導・教育に当た
っています。
ある県の後継者倫理塾H運営委員長は、ひ
ときわ熱い思いで塾生の教育に当たっていま
す。月に一度、一泊二日で行なわれる塾は、
原則として遅刻・早退・欠席は認められませ
ん。なぜなら、自社の社員と協力して、塾に
参加する時間を確保することも、塾生にとっ
ては大きな学びだからです。入塾の際にすべ
ての日程が伝えられているスケジュールに自
分の予定を合わせていくことも、経営者にと
っては約束を守る大切な実践なのです。
しかしある日、O塾生はどうしても自らが
プレゼンテーションをしなければならないお
客様との約束が、塾の開催と重なってしまい
ました。H運営委員長は「何が何でも都合を
つけて塾に参加しなさい。スケジュールは何
カ月も前から決まっていた。その約束を破る
なんて、君は後継者、いや社会人として失格
だ」と一喝。O塾生はしぶしぶ社員に仕事の
段取りを伝えて塾に参加しました。
しかし講義中も食事中も、社員に任せた仕
事のことが気になって仕方ありません。一泊
二日のスケジュールが終わり、会社に駆けつ
けたO塾生。対応を社員に任せてしまったこ
とをお客様に詫びようと電話をかけたところ、
先方からは意外な返事が返ってきました。
「君のところの社員は、準備もしっかりして、
対応も明るく、とても好感が持てる。次から
はあの社員をうちの担当にしてくれないか」
叱られると思っていたO塾生はあっけに取
られました。H運営委員長に一喝され、しぶ
しぶでも約束を守ったことにより、社内に自
分の右腕となる人材が誕生した瞬間でした。
ただでさえ時間と労力がかかる人材教育で
す。後継者の育成となれば、その苦労はなお
さらです。しかし、純粋倫理をベースにした
倫理経営を行なう後継者を全国で育成してい
くことは、私たちが目指す日本創生へ向けて
避けては通れない道です。知識やテクニック
に頼らない心の経営を目指す後継者が、今日
も全国で汗を流し、必死に成長しています