苦難を乗り越えた時倫理の醍醐味を知る

企業経営にも、成功への道程があります。
それは純粋倫理で言う〈事業の倫理〉です。
倫理運動の創始者・丸山敏雄は、「人は事業
をするに当って、目的・準備・秩序・方法・
始末と、どれかをふみあやまると、事業の上
に故障が起きる。この時、どこがいけないの
かと突きとめて、はっきりとそれを止め、事
業経営の大道に立ち返って元気よく進むと
き、ただ苦難をのがれるというだけではない、
新しい広々とした幸福の天地が開けてくる」
と述べています。
では、その〈事業の倫理〉を簡単に記して
みましょう。
第一に、「事業経営は何のためにするのか。
誰のためにするのか」という目的を明確にす
ることです。これを文章化したものが、経営
の目的である〈経営理念〉です。
第二に、心の準備として「関係者すべての
心の一致、特にその中心者となる人の夫婦愛
和」が必要です。これが事の成否に関わる根
本事項です。
第三に、「順序は間違わずに進んでいるか」
ということです。〈この事業は人のために行
なう〉という利他の精神が大切です。「出せ
ば入る」のように、人に尽くせば、必ず尽く
されるものです。
第四に、「方法や、やり方に間違いはない
か」です。これは、関係者が喜んで取り組ん
でいるかが大切となります。
最後に、「後始末はよいか」ということで
す。「やれやれ、仕事はすんだぞ」と気を抜
くと、そこから物事は崩れていくものです。
一つひとつの仕事が終わっても、安易に気を
抜かないことが大切です。
このたび倫理経営講演会の関連図書とし
て刊行された『毅然と立つ―体験で綴る経営
者の決断』(倫理研究所編)には、倫理法人会会
員六名の顕著な体験が収められています。
登場する経営者の体験は、すべて〈事業の
倫理〉に則った経営に転換した時、思いもよ
らぬ好結果が生じたという内容です。
「企業経営は金のため。頭の中は金のことば
かりだった」と述懐するО氏や、「不当解雇」
と訴えられて信用が失墜したⅠ氏の体験な
ど、経営上の苦難に出合い、その時どのよう
に対処していったかが詳細に綴られていま
す。先述の〈事業の倫理〉に合致した方向に
転換したことで、その後の企業運営が好転し
ているのが顕著な特徴です。
掲載者の一人は「倫理を学び、実践してい
るからといって、苦労や苦難がなくなるわけ
ではない。一つの苦難を抜けてステップアッ
プしたなら、またそこに苦難が待っている。
苦難と出合うたびに何かを学び、階段を一つ
昇る。それが倫理経営の醍醐味だと思う」と
語っています。