物事はスタートが大切です。例えば、職場
においては朝礼によって、しっかりと働く心
に切り替える企業も多いと思います。倫理法
人会においても、モーニングセミナーの前に、
世話役の方々が役員朝礼を行ない、参加者を
よりよい形でお迎えする意識作りをしたり、
行事を行なう前に、その成功と無事を願って
「始めの式」を執り、準備運営に当たるとこ
ろもあるでしょう。それらの事柄は、目的を
把握し、役割を確認し、情報を共有し、意識
を統一して、各人が存分に持てる力を発揮す
るために行なわれます。人が寄り集まって、
物事を進めていく時、このようにしっかりと
したスタートを切ることが成功につながる
ことは、誰もが経験していることです。
一方で、個人として一日の始まりに取り組
んでいることはあるでしょうか。倫理運動の
創始者・丸山敏雄は、毎朝神前で誓詞を奉唱
して、今日あることへの感謝を捧げました。
一日の仕事に真心を尽くしていくことを誓
い、倫理運動が進展して、世界がよりよくな
っていくことを願っています。倫理法人会の
経営者の中にも、毎朝しかるべき形で誓いを
立てているという方が少なくありません。
経営者の場合、そのような姿勢が企業内に
確実に波及していきます。例えば、どんなに
素晴らしい経営理念を掲げても、経営者自身
がそれとかけ離れた意識で取り組んでいて
は、理念は絵に描いた餅に堕するでしょう。
人世のために貢献するということが、企業理
念の重要な要素の一つです。それを牽引する
経営者が、その生き方に磨きをかけ、いかな
る時にもぶれることのないリーダーとして
の中心軸を確立するために、朝の誓いは有効
なものといえるでしょう。
さて、倫理法人会が主催するモーニングセ
ミナーでは、最後に誓いの言葉を斉唱します。
「今日一日 朗らかに安らかに喜んで
進んで働きます」という誓いを、どのような
思いで斉唱しているでしょうか。純粋倫理の
実践の指針である、明朗・愛和・喜働が、斉
唱しやすいリズムでまとめられています。こ
の平易な言葉を、愚直に心を込めて斉唱すれ
ば、そこに込められた深い意味を噛み締める
ことができるでしょう。
古来、日本人は人が発する言葉の持つ力を
感じ、言霊と表現しました。伝達手段として
の言語には、目に見えない力があると信じて
きました。東日本大震災直後、日本人は海外
から賞賛されるような底力を発揮しました
が、社会不安の増大や国力の低下に歯止めが
かけられずにいます。その根底には、何のた
めに生きるのかという、個々人の生きる指針
の喪失があるでしょう。学校や家庭あるいは
地域社会といった教育の場が、その力を低下
させているといわれる現代において、その最
後の砦は企業にほかなりません。指導者たる
経営者がどのような生き方をしているのか、
ということが日本の未来を左右します。
リーダーの要諦の一つは、私心を捨て去る
ことだといわれます。公器としての企業が社
会に対して本当の貢献をし、繁栄していくた
めに、経営者が毎朝の誓いによって、リーダ
ーとしての器に磨きをかけていきましょう。