社員教育の秘訣は真の愛を注ぐこと

「どうしたらK君は本気になって働くのだ
ろう」「最近、S子さんの様子がおかしい。
仕事に身が入っていないようだ」など、社員
の仕事ぶりに関して悩まない経営者はいな
いでしょう。社員教育や人材育成は、経営者
にとって最大の課題であるといえます。
心から喜んで働く社員が多くなれば、職場
は放っておいても活気づき、そして活力が湧
いてきます。どうすれば社員が自ら進んで働
くようになるのでしょう。
社員を育成する上で大切なのは、「社員を
変えようとしても決して社員を変えること
はできない」という真実を認識することです。
これまでの自分自身を振り返ってみまし
ょう。他人から注意されても、結局のところ
は変わらないものです。他人から指示を受け
ただけでは、その時は変わったように見えて
も、いずれ元の状態に戻ってしまいます。
ただし、社員に対して少なからず影響を与
えられる場合があります。それは「社員は社
長の言うことでは変わらないが、社長の行な
いや心で思っていることの影響は受ける」と
いう現象に目を向けることです。
社員に限らず、人が育つ上で源となるもの
が「愛」です。つまり、社長が真の愛に溢れ、
本物の愛に満ちただけ、社員はその愛を受け
て変化し成長することができます。
N社では、社員が入社して数年が経過し、
一人前になると、やる気のある社員から退職
願いが出て、会社を辞めていくという状況が
続いていました。せっかくここまで時間と経
費をかけて育成し、ようやくこれから本当の
意味で社に貢献してもらおうという矢先の
退職に、N社長はいつも憮然としていました。
そんな折、知人の社長から「社員の退職は
君に愛情が足りないからだ」と指摘されまし
た。「君の愛情を豊かにするために、まずは
最も近い愛情の対象である妻に対して愛情
を高めることが大切だ」と教わったのです。
確かにN社長には思い当たるところがあ
りました。社員が特に思うように働かない時
は、その不満を我が家に持ち帰っては妻に対
して不機嫌な態度を取り、愛情らしい愛情は
ほとんど妻にかけていなかったのです。
それ以降、妻の言うことに耳を傾け、休み
の日には買い物にも一緒に出かけました。N
社長は、これまで一方的に妻に要求をするば
かりで、妻の意見は一切受け入れていなかっ
た自分を改めて省みました。
そして、このことを会社にも当てはめて考
えてみました。専務に対しては妻と同様に要
求ばかりで、まったく専務の意見を聞いてい
なかったのです。専務に対する愛情が欠けて
いたことを反省し、それからはできるかぎり
意見を聞くよう心がけました。
この社長自身の愛情の変化と共に、社員が
明るくなり始め、社内全体の雰囲気が一変し
ました。その後、社員の定着率が上がり、社
員の働きぶりも向上して、会社は活況を呈し
て現在に至っています。
社員の成長を願う時には、「自分がどれだ
け本当の愛に満ちているかどうか」を胸に手
を当てて考えてみましょう。そこにこそ人材
育成・社員教育のポイントがあります。