徳島県で測量会社を営む松本コンサルタント会長の松本忠氏は、事業・家庭に課題が発生する度に倫理指導を受け、倫理経営を実践して自社企業の継続発展に尽力してきました。
昭和四十六年に会社を創業し、平成十六年に社長職を譲るまで、第一線で走り続けてきました。
創業当初、仕事は順調でしたが、経営面では苦難の連続でした。取引先のほとんどが公共事業であるため、発注者からの入金は作業完了後となり、それも年にまとめて2~3回の入金です。仕事をすればするほど経費や給与を賄う資金繰りに苦心する毎日。経理担当である妻の苦悩は重なり、さらに石油危機で仕事が減り、同業者との競争も激しくなってきた頃、藁にもすがる思いで出合ったのが純粋倫理でした。
資金繰り、従業員の入退社の繰り返し、交通事故や仕事上のミスなどトラブルが続いていることに対して、「夫婦愛和の生活に立ち返ること」「順序を守ること」のアドバイスを受け、即実践します。会社の中心である自分の家庭生活がぶれていては物事が進まないことを実感したのです。
また、作業をしている現場の社員に対する心構えとして、「社長自身の心の緊張を常に緩めないこと」とアドバイスを受けます。経営者自身が緊張感を保つ生活を送り、常に社員に心を向ける大切さを教わり、それを実行しました。その後、会社が拡大し社員が増えても、事故やトラブルは減り、社内が安定した方向に向かっていきます。
「決めた支払日には必ず約束通り、請求書通り払うこと」「心に思うことが明るく、前向きであれば行動も良くなる」など、数えれば切りがないほどの倫理指導とその実践により状況は一変しました。さらに周年行事や朝礼の実施で会社の一体化が図られました。
倫理運動の創始者・丸山敏雄は著書の中で、事業が成就するまでの法則を示しています。
事業の倫理
①目的…人の為、世の為になる
②準備…関係者全ての精神の一致
③順序…順序は間違っていないか
④方法…喜んで前向きな方法で進める
⑤始末…挨拶状・区切りは出来たか
『サラリーマンと経営者の心得』を参照
松本氏はこれまで受けた倫理指導はこの法則に則っているのだと気づいたのです。
二代目社長の松本祐一氏より「創業時の思いや倫理経営の実践体験を自叙伝として残しませんか」と提案され、『私の履歴書』がアニバ出版より刊行されました。
同社の社員はこの著書から「創業の精神」を理解し、企業理念を共有しています。
松本氏の著書にある「倫理経営は気付きと実践の積み重ねです。素直に学び実行すれば本物となり結果が出ます」という言葉に学び、純粋倫理を人生の案内役にしたいものです。