今日一日の生き様が明るい未来を招き寄せる

「拡充」方針三カ年の二期目。全国の各県・単会で雄々しくスタートが切られました。
 良い結果を招くには、「活動計画書」を常に意識した、着実・堅実な活動が不可欠です。
 私たちの人生も、企業という組織の盛衰も、過去から連綿と積み重ねられて現在に至るもので、昨日とは縁もゆかりもない今日が来ることはあり得ないでしょう。
 これから訪れる未来も同様です。今日一日の生き方が、明日という未来を自ら招き寄せていると言えるでしょう。
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 水道工事を主力に建設・土木工事、特に下水道工事の分野では、地域のリーディングカンパニーとなっている会社を営むA氏は、祖父・父と続く三代目の社長です。
 創業は昭和二十六年。創業者である氏の祖父は、馬車引きから身を起こし、重量物の運搬、機械据付工事を人力で行なう、猛者集団を束ねる豪胆な社長として有名でした。
 A氏が中学一年生の時、全従業員と家族を集めての慰安旅行がありました。お酒が入ると共に、和気あいあいと宴会が進み、祖父が皆に促されて宴会場の舞台で十八番の「無法松の一生」を披露しました。
いつにも増して気合が入った様子に見入っていると、演舞が終わると同時に、祖父は舞台上で大の字になったのです。この演出に「今日の会長は乗ってるなあ」と参加者も盛り上がりましたが、そのまま全く微動だにしない様子に、徐々にただ事ではないと騒然としました。祖父は、そのまま舞台の上で息を引き取ったのでした。
 A氏はこの出来事を振り返る度に、倫理運動の創始者・丸山敏雄の次の一節を思い出すといいます。
  小さい事に末を乱す人は、大切な事に終りを全うしない。その極は悲惨な死様をすることにさえなるのである。
  昔の人は死を重んじ、りっぱな死に方をしたいと念じた。正しく生きた人でないと、美しい死に方はできぬ。見事な死にようをした人は、見事な一生を貫いた人である。『万人幸福の栞』第十三条
この直後、周囲は悲しみに包まれましたが、家族をはじめ会社関係の方々にも見守られた中での最期だったので、二代目の父へ円滑に事業が継承されました。また家庭内も、残された祖母を皆が支えつつ、円満な一家として現在に至っているそうです。
「武士道とは死ぬことと見つけたり」とは佐賀県鍋島藩に伝わる武士道の心得書『葉隠』の一節ですが、「いかに日常を生きるか」の集大成として「死」が訪れると捉えています。ここ一番で輝かしい結果を欲するのは人の常ですが、そこに至る「日常」こそが問われるのです。
「希望を高く実践は足下から」を肝に銘じ、倫理実践の醍醐味を満喫しましょう。