元来、日本人は清浄なものを好み、汚いもの穢れたものを忌み嫌うとされました。かつて日本では、日常生活を「ケ」の日、祭りを「ハレ」の日とし、人は知らず知らずのうちに気が枯れてしまうものと考えられていました。その枯れた気持ちを祭り、「ハレ」によって甦らせようと考えられてきたのです。
気枯れるとは、悪気があろうと、なかろうと言葉によって他人を傷つけてしまうことです。良かれと思った行為が、かえって他人の迷惑になっている場合も該当します。またきっちりと言葉に出して他人に自分の思いを伝えるべきことを、腹の中にぐっと押さえ込んで、心の中では他人を責めている場合も当てはまるでしょう。
このようなことから、日本では気枯れてしまう人間を、水や湯で体を清める潔斎、海や川や水を身に注ぎ清める禊ぎ、人形代(ひとかたしろ)に罪・災い・穢れなどを移し水に流す、火によってお焚き上げをする等の方法を採っていたのでした。
今一度、こうした日本の伝統行事を見直し、自身の置かれた環境を見直してみてはいかがでしょうか。
人・物・状況・自然現象に対して、意識的にせよ、無意識的にせよ、何か不自然な心持ち(思い)や行ないがあるのであれば、反省する機会を持ち改善することが大切です。
純粋倫理における穢れ、祓いとはどのようなものでしょうか。穢れは、恐れ、怒り、悲しみ、妬み、不足不満の心、囚われる心、自分本位な自己中心的な考えなどが挙げられます。祓えとは「明朗」ほがらか、「愛和」なかよく、「喜働」よろこんではたらくことを通して、日常生活の中で実践していくことに尽きるのではないでしょうか。
改めて社員に対して、「ありがとう。期待しているよ」、お客様には「お蔭様でありがとうございます」などの真心こもった言葉を使っているか、自身を振り返ってみましょう。また家庭では、夫や妻に対して「あなたのおかげで安心して働けます」「いつも感謝しています」など気恥ずかしい言葉であっても、プラスの言葉を使ってみましょう。
日頃使っている道具類に対しても感謝を込めて後始末や手入れをしていきましょう。自社製品に対しては、絶えずその知識を深め研究調査をして、愛情と真心をこめて販売しているかを問い直してみるのもよいかもしれません。
人が心身を清めて純情無垢な姿に立ち返る時、日常では「あたりまえ」としか思えない事柄の中に、実は「有難いもの」が潜んでいることに気づきます。報恩の誠を湧き起こし、自身の生きる力を甦らせていきましょう。