自らの病を通して今の自分を振り返る

倫理法人会で学ぶ「純粋倫理」とは、心の持ち方を重視します。例えば、自分の身体に現われた現象を通して、自身の心の様子を見つめ直しつつ改善していくのです。
A氏は舌や口に炎症ができやすい体質で、毎月のように口内炎ができていました。時には複数の口内炎が同時にできることもあり、食事が困難になることもありました。
ある時、例によって口内炎ができた氏は、倫理研究所の研究員に倫理指導を受けました。口内炎の様子を聞いた研究員は、「Aさん、あなたは感謝の気持ちが足りませんね」と言いました。そして「感謝の気持ちは、心の中で思っているだけでは相手に伝わりませんよ。『ありがとう』と感謝の気持ちを口に出すことが大切です」と付け加えました。
さっそくA氏は、感謝の気持ちを言葉に表わすよう努めました。読んだ本を元に戻す時、「ありがとうございました」と言い、帰宅して靴を脱いだ時、業務が終わってパソコンの電源を落とした時なども「ありがとうございました」と感謝の気持ちを伝えるようにしたのです。
しかし数日後、思いもよらぬ変化がA氏の体に現われました。口内炎が治るどころか、新たな口内炎ができてしまったのです。
「口内炎を治すために倫理指導を受け、実践しているのに、治るどころか悪くなったのはなぜだろう…」
それまでの自分自身の言動を振り返ったA氏は、重大なことに気づきました。それは感謝の気持ちを表現していたのは「物」ばかりで、「人」に対しては皆無だったということです。特に妻に対して「ありがとうございました」と言えない自分に気づいたのです。
後日、「ありがとうございました」と言葉に出し、日頃の感謝の気持ちを妻へ伝えることができた時、氏の口内炎は快癒しました。
以来、A氏は口内炎ができると、自身の言動を振り返るようになったといいます。「感謝の気持ちを素直に伝えているか」「人を攻めるような言葉遣いをしていないか」など、口内炎を契機として、その時々の自分の姿について確認をするようになったのです。
倫理研究所の創立者・丸山敏雄は、経営者モーニングセミナーの基本テキスト『万人幸福の栞』に次のように記しました。
自然な、純粋な、まざり気のない、明るい、……これが、健康にはなくてはならぬ心持である。不自然な心、これが生活の上にあらわれて、やがて、無理をしたり、反対にズボラをしたり、せかせかしたり、いやいやながらしたり、又ひどい時は感情を高ぶらせて、行きすぎた動作に出たりする。これが皆、健康を害する原因になり、病弱のもととなる。
(『万人幸福の栞』一三六頁)
昔から言い伝えられてきた「病は気から」という言葉が象徴するように、気の持ち方次第で身体は良くもなり悪くもなるのです。
身体に現われた現象を真摯に受け止める心が、万全の健康への第一歩なのです.