夫婦の真の愛情が事業を好転させる

テレビや新聞などで報道されているように、痛ましい事件が後を絶ちません。特に家庭内での事件は増加傾向にあるようです。
警察庁の統計によると、「配偶者からの暴力事案の認知件数」が、平成二十四年度では約四万四千件で、前年度より九千件以上増加しています。
企業経営と家庭は別物であり、関係がないように思われがちですが、家庭内に問題を抱えたままでは仕事に身が入らないばかりか、肉体的にも精神的にも悪い影響を与えます。
家庭とは安らぎの場所であり、明日への活力の場所であり、そして気力を充実させる場所なのです。
純粋倫理において、事業の発展は「商売は、水も漏らさぬ、夫婦の和合がその根本である」(『サラリーマンと経営者の心得』)と教えています。経営がうまくいっている時はともかく、業績が悪化してくると夫婦間でいさかいが起こり、お互いの悪いところを責めます。夫婦の不一致が起こり、会社の業績もさらに悪化していくことがあります。
木材加工会社を営むS氏は、技術が確かな上に顧客からの信用も厚い人物でした。仕事は順調で、この先もずっと続くと思っていました。しかし、いつしか家庭のことが妻任せになると、家族との会話はなくなり、笑顔を見せることもなくなっていったのです。
ちょうどその頃から業績が下がり、資金繰りが悪くなっていきます。仕事が減っていくと同時に家族にきつくあたるようになり、夫婦仲はいっそう冷め切っていきました。

結局、会社は資金繰りの目途が立たず、残念ながら倒産に至ったのです。倫理を知ったのはその後でした。
倫理を学び再起を誓ったS氏は、必死に学び、そして実践に励みました。そして「自分はいかに傲慢であったか」「家族に厳しく己に甘い自分であったか」「男は仕事だけをしていればよいと考え、家庭を顧みなかった」等々を反省したのです。
S氏は妻に向かい、これまでのことを詫びました。すると妻もこれまで強情を張っていたことや、夫に対して批判的であったことについて詫びてきたのです。
二人は力を合わせて再建に乗り出すことを誓い合います。それからのS氏は、ものすごい力を得えたような感覚を覚え、体中に力が漲りました。夫婦が本当の愛情に目覚めた瞬間です。流れは良い方向に動き始め、会社の再建を果たしていきます。S氏は後に、「夫婦の心がバラバラだったために経営不振に陥った」と語りました。
なぜ、夫婦仲が良くなれば事業が発展していくのか。『万人幸福の栞』に「夫婦は合一によって、無上の歓喜の中に、一家の健康と、発展と、もろもろの幸福を産み出す」と書かれています。世の中の事柄は二者の対立とその合一によって進展し、新しいものが誕生していきます。家庭では夫と妻との関係です。
ただ、がむしゃらに働くことでこの苦境を乗り切ろうとしても、好結果は得られません。
夫婦が仲良くするところにすべてが生まれ、争う時に全てが崩れていくのです。