「良き企業人たる前に、良き家庭人たれ」といわれます。経営者の学びの場である倫理法人会の特徴の一つは、家庭、夫婦がよりよくなるための原理原則を学習できることです。
経営者に限らず、人が仕事に全力を発揮して成果を上げていくためには、その足場となる家庭が明るく和やかなものであるかが大切です。そのためには、夫婦の心が一致していることが重要なのは、倫理法人会で学ぶ経営者が実践によって証明しています。
ではそのポイントとなるのは、どのようなことでしょうか。経営者モーニングセミナーのテキストともいえる『万人幸福の栞』には、「夫婦が互いに相手を直したいと思うのは逆である。ただ自分をみがけばよい。己を正せばよい。その時、相手は必ず自然に改まる」とあります。
しかし、そうとわかっていても相手を変えようとしてしまうのが人間です。夫婦とはいえ、その育った環境は違いますし、結婚当初は同じだと思っていた価値観も微妙に違っているものです。もとは他人なのです。
つまりは、その他人同士が夫婦になるのですから、そこには深い縁があるといえるでしょう。ですから、縁あって夫婦となることの意義を深くかみしめることが大切です。
それは、男女の出会い、それぞれの役割が発揮されて、新たな生命が生み出されるばかりでなく、世の様々な生み出だしのもとになっているということです。決して軽んじてはならない尊厳があるのです。
こうした自覚を深めつつ、夫婦が心を一致させていくには、相手の思いを深く理解し、そのままをすべて受容することが肝心です。
ある経営者は、妻の本当の思いを知った時、愕然・呆然としました。当時会社では大きな問題を抱えていました。社員の定着が悪く、思うように戦力になってくれないのです。倫理法人会の講師に相談をすると、妻の不満を聞くようにいわれたのです。
まさか不満など持っているとは思わない妻から聞かされたのは、家庭に目を向けず、すべてを自分の思い通りにしようとする夫に対する不満でした。その思いを延々と聞かされた時、一番身近な妻の思いを全く理解していなかったことに気づかされたのです。こんなことでは、社員の思いを察することは到底できず、社員も社長の思いなど察してくれるはずはないと思い知らされたのです。その後、妻あっての自分であると愛情を傾け、社員が喜んで働ける職場を作り上げました。
わかっているようでわかっていないのが、身近な人の思いです。ことに夫婦となれば、わかっている「つもり」が積もりに積もっているのではないでしょうか。相手に向き合い、己を正していくことは、経営者としての器を磨き高めていくことでもあるのです。
倫理法人会の今年度のスローガンは、「日本創生企業に倫理を職場に心を家庭に愛を希望の明日を切り拓こう」です。様々な領域で混迷が続く中、日本の未来を切り拓くのは中小企業の経営者だと心し、大きな志のもと、足場としての家庭に限りない温もりを育んでいきましょう