十九世紀にイギリスで活躍した劇作家のジョージ・バーナード・ショーは「人間が賢いかどうかは、経験の量によるものではない。その経験をいかに活かすかによるのだ」という言葉を遺しています。
職場には「様々な経験をしているのに、まったく能力が向上しない」という人がいます。一方では、「同様の経験を積みながら、日々着実に向上している」という人もいます。こうした能力の向上の差は、「普段から『経験』をどのように活かそうとしているか」という姿勢にあるといえます。
入社して五年目のEさんは、職場生活に不満を感じるようになりました。その理由は、同期で入社したF君のみが年月を経るごとにキャリアアップし、昇進しているからです。Eさんは職場内でめざましくステップアップしていくF君を、ねたましくさえ思っていたのです。
そんなある日のこと、「自分には実績を挙げるチャンスが与えられていない。チャンスが与えられれば、努力して必ず会社の期待に応えられるはずなのに…」と先輩のK氏に相談しました。Eさんの話をじっくりと聞いていたK氏は、次のような助言をしました。
「チャンスを与えられているというF君は、『一を聞いて十を知る』という言葉が示すように、仕事を単にこなすだけではなく、そこから様々なことを学んで、次の仕事に活かすことを意識して行なっているよ。そうしたプラスアルファの努力の積み重ねが、社内でのチャンスを引き寄せているのだと思うよ。E君のように『もしチャンスが来たら努力をする』ではなくて、『プラスアルファの努力を積んでチャンスを引き寄せている』ところに、F君との力の差があるんじゃないかな」
Eさんは、K氏の助言を聞きながら、入社した頃からF君が会議や仕事の合間に、サッと手帳にメモを取り、それを時々確認している姿を思い出しました。そして、翌日からEさんは小さな手帳を持ち歩き、〈これは大切なこと!〉と感じたことはサッとメモを取り、チャンスのアンテナを張り巡らすようになったのです。困難に遭遇しても〈経験を積むチャンスが巡ってきたぞ!〉と感謝の心持ちで立ち向かうようにもなりました。
成功するにせよ、失敗するにせよ、そこから何かを学び得るという姿勢を磨き高めることが大切です。そうしなければ、自分自身の仕事力を高めることはできないからです。
例えば、失敗をしても、〈何でミスしてしまったのだろうか?〉と、その原因をしっかりと考えて、その後の対応策を把握していれば、二度目に同じ失敗を繰り返す可能性は少なくなります。さらに、仕事力の改善策のための課題ハッキリと見えてくるのです。
成功している時も、その要因を分析することが大切です。謙虚な姿勢を保ちながら、昨日よりも今日の仕事で発展した成果を手に入れることが出来るでしょう。
人に与えられている時間は「一日=二十四時間」と皆平等です。その時、一瞬一瞬をどのように学び、どう活かしていくかで自己は成長していくのです。