川口雅昭氏編 致知出版
『吉田松陰一日一言』
―魂を鼓舞する感奮語録―
4月 「武士の恥を知らざること今日に至り極まれり」
君子は徳義なきを恥ぢ、小人は名誉なきを恥づ。君子は才能なきを恥ぢ、小人は官禄なきを恥づ。(中略)小人の恥づる所は外見なり。君子の恥づる所は外見なり。君子の恥づる所は内実なり。(中略)抑々恥の一字は本邦武士の常言にして、恥を知らざる程恥なるはなし。武士の恥を知らざること今日に至り極まれり。 安政3年5月17日「講孟劄記」
【訳】
心ある立派な人は、人として踏み行うべき義理の心が足りないことを恥じ、つまらない人間は、名誉がないことを恥じる。君子は才能がないことを恥じ、小人は官位や俸禄が低く、少ないことを恥じる。(中略)小人が恥じるのは外見である。君子の恥じるのは心の内面である。(中略)だいたい、「恥」という一字は我が国の武士が常に口にする言葉であり、恥を知らないということほど恥ずかしいことはない。その武士たるものが恥を知らないこと、今日ほどひどい状態は未だかつてない。