川口雅昭氏編 致知出版
『吉田松陰一日一言』
―魂を鼓舞する感奮語録―
「進むこと鋭き物は」
其の進むこと鋭き者は、其の退くこと速かなりと。已むべきに於て却つて已めず、薄くする所に於て却つて厚くする者、一旦の奮激にてすることにして、真に誠よ り発し終始衰へざる者に非ず。故に其の進鋭の時に方りては、已めざる者も厚き者も或いは及ばざることあり。而して其の退くの速かなる、時去り勢変じ、索然跡なき に至る。
安政3年5月29日「講孟劄記」
【訳】
調子よく進むものは、退くことも早いという。やめるべき時にやめず、ほどほどでいい時に、かえって手厚くするものは、一時的な感激で行っているだけである。本当まごころから行い、ずっと(その気持ちが)衰えないものではない。だから、その調子よく進めている時には、やめられないものも、手厚くするものも、(心ある人で も)とても及ばないように見える。しかしながら、(そのような調子のいい人間は)退く素早さといえば、時勢が去り、勢いが変われば、全く跡形もなくなるようなものだ。
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