川口雅昭氏編 致知出版
『吉田松陰一日一言』
―魂を鼓舞する感奮語録―
5月12日 「塾とは」
今の学ぶ所の※四書五経は、皆聖人の学なり。
然るに善の善に至らざるは、塾の一字を闕くなり。
熟とは口にて読み、読みて熟せざれば心にて思いひ、思ひて熟せざれば行ふ。
行うて又思ひ、思ひて又読む。誠に然らば善の善たること疑ひなし。
安政3年3月28日「講孟劄記」
【訳】
今人々が学んでいる四書五経は、孔子、孟子が説いた教えを記したものである。
それなのに、善の善たる境地に達することができないのは、
「熟」という一字を欠いてい るからである。
「熟」とは、口で読み、読んで熟さないなら、思索、
つまり、物事のすじみちを立てて深く心で考え、思索しても熟さないならば行動する。
行動して、また、思索し、思索してまた読む。
本当にこのように努力すれば、「熟」して、善の善なる境地に達することは、疑いないことである。
※四書とは、『論語』・『孟子』・『大学』・『中庸』。五経は、『易経』・『詩経』・『書経』・『春秋』・『礼記』をいう。