川口雅昭氏編 致知出版
『吉田松陰一日一言』
―魂を鼓舞する感奮語録―
「古人今人異るなし」
余常に謂ふ、古人今人異るなし。(中略)俗人の癖として、古人と云へば神か鬼か天人かにて、今人とは天壌の隔絶をなせる如き者と思ふ。是れ自暴自棄の極みにて、(中略)与に※堯舜の道に入るべからずとは此の人なり。 安政3年6月17日「講孟劄記」
【訳】
私は常に「昔の心ある立派な人も、今の私どもも何ら変わりはない」といっている。(中略)つまらない人間の癖として、昔の心ある立派な人といえば、神様か、鬼か、天の人かと見なし、今の私どもとは、天と地ほども大きな違いがあると思っている。これは、自分を駄目なものと思い込み、将来を考えない、投げやりな態度の極みである。(中略)共に手を携えて堯帝や舜帝の道に入ることができない人とはこういう人である。
※堯帝と舜帝。共に、中国古代伝説上の聖王。堯帝は暦を作り、治水に舜帝を起用し、位を譲った。また、舜帝は、よく親に仕え、同じく治水に功績のあった禹に位を譲ったといわれる。