『吉田松陰一日一言』

川口雅昭氏編  致知出版

『吉田松陰一日一言』

―魂を鼓舞する感奮語録―

「自ら四時あり①」 

吾れ行年三十、一事成ることなくして死して禾稼の未だ秀でず実らざるに似たれば惜しむべきに似たり。然れども義卿の身を以て云へば、是れ亦秀実の時なり、何ぞ必ずしも哀しまん。何となれば人寿は定りなし、禾稼の必ず四時を経る如きに非ず。

【訳】

私は今三十歳で人生を終わろうとしている。いまだ、一つとして物事を成し遂げることなく死ぬのであれば、これまで育ててきた穀物が成熟しなかったことに似ているので、惜しむべきかもしれない。しかし、私自身の人生からいえば、稲の穂が成熟して、実りを迎えた時なのである。どうして悲しむことなどあろうか。ありはしない。なぜなら、人の寿命はこうだという決まったことはない。つまり、穀物が必ず四季を迎えて成熟するようなものではない。