川口雅昭氏編 致知出版
『吉田松陰一日一言』
―魂を鼓舞する感奮語録―
6月20日 「君子小人並びに服するの人②」
徳行の士は「居処恭しく事を執りて敬し、人と忠なるは夷狄に之くと雖も棄つべからざるなり」<(論語)子路>「言忠信、行篤敬ならば、蛮貊の邦と雖も行はれ
ん」<(論語)衛霊公>の類にて、斯くの如き者は君子小人並びに服するの人なり。 安政3年6月7日「講孟劄記」
【訳】
二つめは、徳行の人、つまり、道徳にかなった人物であり、「日頃の生活態度はうやうやしく、仕事に際しては心をそのことに専らにし、敬い謹んで、怠らず、ゆるがせ
にしない。また、人と交際する時には忠誠を尽くして、斯き偽らない。この三つは、夷狄のような、礼儀道徳の低い所へ行っても、すてて、これを失ってはいけな
い」<(論語)子路>とか、「言葉が誠実で正直であり、行いが人情に厚くつつしみ深ければ、言行共に誠があるので、自然に人を感動させて、(中国はいうまでもな
く)どんな未開の土地に行っても行われることであろう」<(論語)衛霊公>という類である。このような人物に対しては、君子も小人もともに敬服するものである。