川口雅昭氏編 致知出版
『吉田松陰一日一言』
―魂を鼓舞する感奮語録―
6月27日 「今人大眼目なし」
今人大眼目なし、好んで瑣事末節を論ず。此の弊読書人尤も甚し。(中略)其の自ら行ふ所を見れば、辺幅を修飾し、言語を珍重し、小廉曲謹、郷里善人の名を貪り、権
勢の門に伺候し、阿諛曲従至らざる所なし。行々の色著はれず、侃々の声聞えず、中ならず孝ならず、尤も朋友に信ならず、而して自ら居りて愧づることを知らず。是れ
を之れ務を知らずと謂ふ。
安政3年5月29日「講孟劄記」
【訳】
今の人は大きな見方ができず、つまらない、枝葉のことばかり論じている。この欠点は読書をしている人に大変顕著である。(中略)そのような人の行動を見れば、上
辺を飾り、言葉づかいを重々しくしている。また、さっぱりとして、欲がなく、細かいことも注意深く謹み、ふるさとで立派な人と呼ばれたいと望み、権力のある家には
おべっかをつかい、自分を曲げてでも追従している。剛健な態度、剛直な見識はなく、忠孝を実践する様子もない。友人に信義がなく、自分の行いを恥じることも知らな
い。このような人を、人としてのなすべきことを知らない人という。