『吉田松陰一日一言』

川口雅昭氏編  致知出版

『吉田松陰一日一言』

―魂を鼓舞する感奮語録―

7月3日 「憚り多きことならずや」

道は古聖賢大抵言ひ尽せり。今の学者多くは其の書を観て口真似をなすのみ、別に新見卓識古人に駕出するに非ず。然れば師弟共に諸共聖賢の門人と云ふものなり。同門
人の中にて妄りに師と云ひ弟子と云ふは、第一古聖賢へ対して憚り多きことならずや。 安政2年8月16日「講孟劄記」

【訳】

人としての道は昔の聖人や賢者が大抵いい尽くしている。今の学者というもの、多くはその書を見て、口真似をしているだけである。別に新しい発見や優れた見
識が、昔の聖賢を凌いでいるわけではない。とすれば、師も弟子も全て聖賢の門人というべきものである。だから、同じ(聖賢の)門人の中で、むやみに師といい、弟
子というのは、昔の聖賢に対して、恐れ多いことではないか。