子供の本質とは何でしょう。
倫理研究所の創設者・丸山敏雄は、子供は「親のもの(私物)ではなく、天の子である」と述べています。
「授かりもの、預かりもの」こそ子の本質であり、それをわがものとして思い通りにしようとするから、
間違いと苦しみが起こってくるというのです。
子の本質とは、具体的には次のようなものです。
●愛情の相手
「愛は母乳の如く、与えぬと涸れてしまう。井戸水のように、汲まぬとくさってしまう。
無尽蔵とは愛の倉につけた名であろう」(『万人幸福の栞』)。
愛情は与えるものであり、出すほどに良いものが出ます。
親は、子供という愛情を注ぐ対象を天から授かりました。
子育てを終えた夫婦がペットを飼う、というケースがありますが、子供たちが巣立ったことで、
愛する対象がペットに引き継がれて、心が満たされるのでしょう。
●和楽の中心
幼い子の仕草に、誰もが微笑ましい気持ちになることがあります。
「夫婦の諍いを何気ない子供の一言が解決した」という経験をお持ちの方もいるでしょう。
Aさんの次男は、いつでもどこでも笑顔を絶やしません。家族だけでなく、周囲の人達も和やかな気持ちにさせてくれます。
「次男の笑顔に何度も助けられた」とAさんは語ります。
●親の心の鏡
Bさんは娘の素行の悪さに手を焼いていました。信頼する先輩にそのことを相談すると、
娘が生まれた時の気持ちを問われました。
男の子を望んでいたBさんは、娘の誕生を心から喜ぶことができなかったのです。
そして、父親である自分の心が、娘の行為に表われていることを実感しました。
親の心を、そのまま鏡に映るように子供が見せてくれるのです。親は自分を振り返って、道を改めてゆくほかありません。
●親の身代わり
丸山敏雄は「子は親の身代わり」ということを、自身の実験を通じて実感しました。
四歳の次男が麻疹にかかった時、自分たち両親の心の間違いが病気の原因なら、
風にあてても風呂に入れても差し支えないはずだと考えた敏雄は、次男を連れ、春先の川堤で桜を鑑賞し、共に風呂に入りました。
そして、これまでの夫婦の心遣いを反省して改めると、翌朝、次男は食欲も回復し、すっかり元気になりました。
●親まさり
子供は親たちが持っているもの、祖先から引き継いだものすべての上に自分の創作を加え、子孫へ譲っていきます。
まるでリレーのように、次の世代へとバトンを繋いでいくのです。
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これらの本質をしっかり捉えて、「授かりもの、預かりもの」であることを忘れずに、親の役割を全うしたいものです。
また、この親と子の関係は、企業における社長と社員の関係にも置き換えることができるでしょう。