年の瀬に物の後始末を

早いもので師走も半ばです。職場や家庭で、年末の大掃除を計画している人も多いことでしょう。
今年一年お世話になった「場」の清掃とともに、「物」の後始末も、年末を機に取り組みたいものです。
 情報社会とはいえ、会議資料やノート、領収書など、紙を使う場面は多いでしょう。
廉価な文房具が出回る一方で、机の中に使いかけのボールペンが何本も転がっている人も多いはずです。
また、勤務中に着るユニホームや仕事道具など、職場の周りには、様々な物があふれています。
そうした物の手入れを普段どれくらい行なっているでしょうか。
また、使い古したり、使えなくなった時の後始末は、どのようにしているでしょうか?
 ある職場の同じ部署で働くC君とA子さん。仕事で使う資料や物の扱い方が対照的です。
C君の机の上には、いつも紙の資料が山積みです。どこに何があるのかわかりません。突然提出す
るように指示された資料も、取り出すまでに時間がかかります。
引き出しの中は、いつ買ったのかわからない菓子で溢れています。
机の中に散乱する文房具は、なぜかすぐに使えなくなることが多く、すぐにゴミ箱行きです。
仕事の能力は高いC君ですが、効率の悪いことと、仕事が雑なところから、今ひとつ周囲からの信頼を得られません。
一方、A子さんは、後始末の実践に取り組んでいます。
一日の仕事が終わった後には、その日使った資料を整理します。
パソコンや文房具はホコリや汚れをふき取って、所定の場所に戻します。
心の中で「今日も一日無事に仕事ができました。ありがとうございました」と思いながら、片づけをするようにしています。
 また、家庭でも、使い古した物は、汚れを拭き取ってから捨てるようにしたり、着古した服も、
一度洗濯をした後にリサイクルに出したり、端切れにしたり、処分したりしています。
A子さんの仕事量は以前とは変わらないものの、後始末を実践することで、効率よく、
短時間で仕事を終えられるようになっていきました。〈物が私のことを助けてくれるのかしら〉
と不思議に思いながらも、嬉しいA子さんです。
純粋倫理では、人と人の間に倫理があるように、人と物の間にも倫理があると考えます。
純粋倫理学習の基本テキストである『万人幸福の栞』第十一条では、物の倫理を次のように説いています。
着物も、道具も、機械も、金銭も皆生きている。
大切につかえば、その持ち主のために喜んで働き、粗末にあつかえば、
すねて持主に反抗するだけでなく、時には腹立てて食ってかかる。
 後始末をきちんと行なうことは、まさに物を大切にし、感謝する実践にほかなりません。
会社の備品、自身で購入した物との区別なく、その物によって一年間無事に仕事ができたことに感謝し、
しっかりと後始末をして、今年を締めくくりましょう。