逆境をどう受け止めるか

事業商売に逆境はつきものです。
辞書に「苦労の多い境遇。不運な境遇」(『大辞泉』)とあるように、普通は誰しも喜ばない状態です。
それでも「逆境こそ自分を成長させてくれる」や「ピンチこそチャンス」という言葉で、
逆境を前向きに受け止めようという話をよく聞きます。
しかし、あまりに軽々しく「ピンチはチャンス」と言われるのを聞いていると、本当にきちんと受け止めているのだろうか、
という不安に駆られる時があります。
起きてくる苦難を前向きに受け止めようとすることは大切なことです。
しかしそれは、逆境を乗り越える端緒に過ぎません。
それがもし、危機的状況に直面した自身の恐怖心を無理やり中和するための方便であれば、非常に危険なことでしょう。
事業経営における逆境は、放置すれば、企業の存続を脅かすものです。
したがって、まず重要なことは「必ず乗り越えるのだ」という強い決意です。
そのうえで適時的確な処置を施し、その過程で、トップはもとより社員一人ひとりが、
平常時には学び得ない様々なことを体験し、有形無形の実を取ることができて初めて「逆境を活かした」といえるのでしょう。
ピンチはあくまでピンチであると捉え、持てる力を総動員して乗り越えた時、結果として
「企業をより良くするチャンスだったのだ」ということになるのです。
では、このように逆境を企業の発展に活かすために、日頃の生活において、どのようなことが重要になるでしょうか。
第一は、自分の身に起きてくる物事に対して、喜んで、感謝を持って受け止めることです。
とかく逆境に陥ると、犯人探しに汲々となり、その人を責めたり、自分を取り巻く状況のせいにしがちです。
しかし、責めたり嫌ったりしても、何も生まれません。
日常から、何ごとも喜んで受け止めることを心がけ、周囲に対する感謝の心を深める実践が、
いざという時の「受けっぷり」に表われます。
第二に、何かのトラブルに見舞われた時、その原因を正しく見極め、的確に対応する習慣をつけることです。
実務面における様々な原因については、すばやく処置して、二度と同じ轍を踏まないようにすることが求められましょう。
さらに大切なのは、そうした事態を起こした真の原因を見抜くことです。言い方を変えれば「この状況は自分に何を教えようとしているのか」「いったいわが社に何を教えてくれているのか」と問うことです。
経営者にはそうした、目に見えないものを見つめる、深く澄んだ心の目が求められるのではないでしょうか。
事業商売におけるピンチをチャンスに変えるのも、日常の実践の積み重ねがあればこそでしょう。
日頃の小さな悩みや逆境をうやむやにせず、解決を先送りせずに、自分や企業がより成長するチャンスとして、
真摯に向かい合っていきたいものです。
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何事にも感謝の心を忘れず、
PDCAを回します。