心の癖に気づく

ものの見方、考え方には、人それぞれ癖があるものです。
自分では偏っていないつもりでも、そうした癖は、誰にでもあるのではないでしょうか。
例えば満開の桜を前にして、どのような見方をするか。
「何と美しい桜だろう。日本人に生まれてよかった」と捉える人がいる一方で、
「もう桜の季節も終わりだね。誰が散った花びらを掃除するんだろう」と受け取る人もいます。
「無くて七癖」の諺の如く、誰もが無意識のうちに、自分なりの心の癖を持っているようです。
これは日々の出来事に対する受け止め方にも当てはまります。
突然雨が降ってきた時、道路工事で道がひどく渋滞している時、
お客様からのクレームを受けた時など、その時々の状況をどのように捉えているでしょうか。
経営者のSさんは、雨の日は憂うつになります。トイレが湿気でジトジトと湿りがちになる上、
お客様の靴についた泥や雨水でフロアが汚れるからです。
そのようなSさんでしたがある日をきっかけに、雨に対する考え方が変わりました。
同業のN先輩が、雨の日に店を訪れた際、「トイレを見せてくれ」と言いました。
トイレを一通り見回すと、突然、トイレ清掃を始めたのです。
日頃から親身になって、仕事や家庭の悩みについて相談にのってくれる先輩であり、
心から尊敬してきましたが、この時ばかりは呆気に取られて、声も出ませんでした。
清掃を終えてN先輩はこう言いました。「
トイレが汚れるのは、お客様が大勢来てくれている証拠だぞ。感謝しなくちゃな。
『これがよい』だよな」
予想もせぬN先輩の行動でしたが、この言葉はなぜか胸にスーッと入ってきたのでした。
〈そうか、雨の日で足元が悪いのに、お客様が来てくれるから汚れるんだ。ありがいことだな〉と、先輩の言葉に納得したSさん。その後、嫌だなと思う出来事に遭遇した際、
「これがよい」と口に出して言ってみると、心の面に変化が現われました。
それまで〈トイレと厨房は社員が掃除するもの〉と疑いもなく考えて社員を責めていましたが、
汚れを見た時に「これがよい」と言葉に発してみると、社員を責める気持ちがなくなったのです。
そしてSさん自らトイレを清掃し、厨房のシンクをピカピカに磨き、
社員が気持ちよく働ける環境づくりに努めました。
きれいな職場になるに従い社員の意識に変化が現われました。
提供する料理の味付けや盛付けにも細心の心配りができるようになり、
お客様からの店への評価が格段に上がっていったのでした。
何事もまずは「これがよい」と肯定的に受け止めることが、自らの行動を変え、
職場環境を好転させる力になることを実感したSさん。
「これがよい」はSさんにとって魔法の言葉となり、ものの見方・考え方の偏った癖に気づき、
全ての物事を肯定的に受け止めていけるようになったのです。
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「これがよい」何事もプラスの思考の循環によって良くなりますね。