先人の美徳を次の世代へ

私たち倫理法人会は、純粋理理の実践・普及により、自己の幸福を求めるのみならず、
広く社会に貢献することを目的としています。
倫理や道徳といった、健全な社会を下支えする「人としての筋道」を世に訴え、
喚起していくことも大事な活動の一つです。
倫理や道徳は、私たちが一人ではなく他者との共同生活を営む上で、大切にすべき規範です。
その形成の過程には、周囲から賞賛されたり、感心されるような先人たちの行為が
何かしらあったことが想像されます。
つまり、倫理や道徳は、太古の昔から人類に備わっていたのではなく、
先人たちの貴重な経験知や経験則が蓄積されたものであり、
さらに時間という検証を経た叡知の集大成として、今日の誰もが大切だと考える倫理や道徳
として認知されるに至ったのでしょう。
日常生活の中で道徳的な行為を見聞きしたり、美徳と称されるエピソードに触れると、
心が温かくなったり、ホッとさせられたりします。自ら苦しみの渦中にありながらも、
自分より他者を助けようとするような行為を耳にすると、
私たち聞く側の心も洗われるような気持ちになるものです。

T子さんは、小学校のPTA活動として行なわれている「読み聞かせ」の当番として、
小学校六年になる娘の学校を訪れました。
何を読めばよいか考えた末、島田洋七さんの『佐賀のがばいばあちゃん』を選びました。
戦後の貧しさの中にも明るく豪快だった祖母の人情溢れるエピソードがちりばめられ、
生活の知恵に満ちた本です。T子さんは、子供たちに親祖先からの愛情を再確認
してもらうと共に、個々が持つ無限の可能性を開花させ、
有意義な人生を歩んでほしいと十五分間の熱弁を振るったのでした。
帰宅した娘に感想を聞いてみると、いつもは立ち歩いて、
読み聞かせに集中できないクラスメートも熱心に聞いていたとのこと。
まずまずの反応を聞き、ホッとしたそうです。
昨今のテレビでは、会社で部下に対して理不尽な要求のかぎりを尽くす嫌味な上司や、
公共の場で他人の迷惑を省みない人物を、様々な手法で懲らしめ、
視聴者をスカッとした気持ちにさせる番組が人気を呼んでいるようです。
昔から、「赤穂浪士」などの時代劇や子供たちが夢中で見るヒーロー戦隊ものも、
物語の下地は「勧善懲悪」でした。いつの時代も「善」が大手を振ってまかり通る世の中を
人々は望んでいるのではないでしょうか。
こうした先人たちから受け継がれた良き伝統である「美徳」を次世代へしっかり伝えることは、
大きな社会貢献といえるでしょう。
それにはまず、身近な家庭や職場において、一人ひとりが身をもって、
子供たちや周囲の人へ希望を与え、良き影響を及ぼす行ないを心がけたいものです。
冒頭に記した倫理法人会の使命を発揮することが、地域社会からもますます求められるでしょう。
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昔から受け継がれた日本人の美徳を継承していきます。