最近「○○ハラスメント」「○○ハラ」という言葉をよく耳にします。
昔から一般的に認知されていたのは「セクシュアル・ハラスメント」(セクハラ)
という言葉でした。近年は「パワー・ハラスメント」(パワハラ)、「モラル・ハラスメント」(モラハラ)という言葉も広まって、対策に取り組む企業も増えてきました。
その他にも、
妊婦に対する嫌がらせや不当な差別を表わす「マタニティ・ハラスメント」(マタハラ)や
未婚者に対する圧力「マリッジ・ハラスメント」(マリハラ)、
アルコールの強要や飲酒した状態での嫌がらせなどを指す「アルコール・ハラスメント」
(アルハラ)、
カラオケで歌うことを強要する「カラオケ・ハラスメント」(カラハラ)、
血液型で人を判断する「ブラッドタイプ・ハラスメント」(ブラハラ)という言葉もあります。
悪意のあるなしに関わらず、不用意な軽口が相手に不快感を与えてしまうことがあります。
職場においても、個々の違いや人間性を尊重して、働きやすい環境づくりに
取り組むことは大切でしょう。
その一方で、経営者や管理職者が、「○○ハラ」を恐れ過ぎるあまり、
日常の会話すらビクビクしながら従業員と接しなくてはいけない状況も問題視されています。
とりわけ「パワハラ」という言葉に敏感になって、叱れないという悩みを持つ人は多いでしょう。良い仕事を実現するために叱ることすら「パワハラ」と受け取られては、
職場内の人間関係も築けなくなってしまいます。
では、どうしたらよいでしょうか。それは、叱る際にも、上下の関係なく相手を尊重する
謙虚な心を持ちつつ、従業員の人生をすべて背負う覚悟で、堂々と叱ることです。
トラブルやミスを起こした従業員を犯人扱いし、感情的に声を荒げたり、
相手の反省する気持ちすらそぐように嫌味を言い続けては、問題の解決にはなりません。
本当に大切なことは、そのトラブルを従業員や職場の成長につなげていくことです。
人生の大半を教育者として生きた倫理研究所の創設者・丸山敏雄は、
愛弟子たちを指導する際の「慈愛のむち」について、親子の場合を例にあげています。
敏雄はつづけて、「のっぴきならぬ大きなあやまりをしでかした時、
両親は命がけで教訓しなければなりません。けっして妥協してはなりません」と述べている。
敏雄は親のような気持、いや、それよりも高い、ほとばしる叡智の愛にあふれて、
弟子たちを鼓舞激励し、そして自身の身体も痛めていった。
(丸山竹秋著『丸山敏雄 人と思想』より)
親に限らず経営者も、相手のすべてを受け入れる覚悟を決め、成長を一心に願って堂々と叱る時、叱られた者も相手を信頼し、そのありがたさに気がつき、互いの成長につながるのです。
「私のために叱ってくれてありがとうございます」。
そう思われるような人間関係を築いていきたいものです。