活路とは、「追い詰められた状態から逃れ出て生き延びる方法」という意味があります。
(『大辞泉』)
ある統計によると、株式会社が十年後に存続している確率はおよそ七割、
二十年後ではおよそ五割だという算出があります。あらゆる苦境が待ち受けていることは、
避けては通れないことで、企業を長く存続させるのはそれだけ厳しいのでしょう。
今月最初に発行した「今週の倫理」では、様々な苦境から脱出するカギは
「人を喜ばせることにある」とお伝えしました。
ひとことで人といっても、お客様、取引業者等、仕事でかかわる人は多岐に渡ります。
その中で、経営者が最も密接にかかわっているのは自社の社員でしょう。
企業規模・形態によって社員数も様々ですが、日常、社員一人ひとりの気持ちを
どれくらい意識しているでしょうか。また、職場を働きやすい環境に改善しているでしょうか。
ひいてはその社員の後ろにいる家族のことまで配慮しているでしょうか。
「お客様を大切にする」とは、よく耳にすることですが、実は社員に心を向ける、
さらにはその家族にまで配慮するところに苦境を脱するヒントが隠されているのです。
二十一歳で社長代行となり、それから四十八年間、増収増益を続けた経営者がいます。
長野県伊那市に本社を置く、伊那食品工業の現会長・塚越寛氏です。
同社は、日本一の寒天メーカーで、国内シェア八十%、世界の十五%を占めます。
塚越氏は語ります。「弊社の『四十八年間連続増収増益』よりも、
『二十年間会社が嫌で退職した人はゼロ』ということに誇りを感じます」
この背景には、独自の経営方針の確立がありました。それが「社員に報いる経営」です。
いわく、「リストラをしない。上場は考えない。年功序列を守る」というものです。
その結果、社員らは長期の視野で腰を据えて仕事に取り組み、
寒天の製品開発が食品以外の分野にまで進みました。
年功序列制度を続けるのは、社員らが愛着を持って「伊那食ファミリー」
と呼ぶ社風を大切にしているからです。たとえると弟がよく働くからといって、
父や兄の食事を減らしては家族の「和」が保てないということです。
塚越氏が目指すのは、売り上げや会社の規模を大きくするのではなく、
絶対に倒産することのない企業を作ることです。社員に報いるのであれば、
会社を永続させることが一番と気づいたといいます。
かの二宮尊徳翁は、自然の摂理を盥(たらい)の水にたとえました。
「欲を出して水をかき寄せると、向こうに逃げる。人のためにと向こうに押しやると、
自分に返ってくる」
この言葉は、何を先にすべきかを示唆してくれます。苦境の中、
外にばかり目を向けるのではなく、内側にこそ、更なる発展、永続のヒントがあるのでは
ないでしょうか。
今日も貴社の社員は、喜んで働いていますか?
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伊那食品工業の現会長・塚越寛氏は素晴らしいの一言に尽きます。
キョウエイホームも10年20年と永続しますよう、
皆様に喜んで頂ける仕事をします。