借金を返すには、どうしたらよいのか。それは、返済しようとする意図を、
明確にもつことである。これがまず第一に、そして根本的に必要な心がまえである。
そんなことはわかっている、などというなかれ。
借金を返せないのは、じつは、この心がまえが、ほんとうにできていないからである。
じっさいの世の中は、ペンでかくようにスラスラとはこぶとはかぎらない。
わかってはいても、どうにも泥沼からぬけだせないで、いつまでもあがいているような事例は、
いくつもある。
しかし、ほんとうにどうにもならぬのであろうか。けっしてそうではない。
かならずそこに、きりひらく道があるのである。
借金を土台にして、りっぱにたち直る方途(ほうと)があるのである。
それは、
【第一】に、金銭を貸してくれた人にたいして、心から感謝の思いを捧げ、
日々に新たな感激をもって、しごとにいそしむことである。
【第二】に、借金をしていることを嫌がらずに、よろこんで受け入れ、人のため、
社会のためを念願しながら、嬉々(きき)として働くこと、
そして夫婦者は仲よくすることである。
借金をしたことを嫌がっていると、その苦境をのり切ることはむずかしい。
借金することができたという事実こそ、じつはすばらしいのである。
みこみのない人には、だれも金銭を貸してはくれない。そのことだけでも、
うれしいではないか。
【第三】に、返すべき期日がきたならば、貸し主に対し、円満に話をつけることである。
つまり、一方的にひとりぎめしてはならないということである。
相手の意向どおりになんでもするという決心のもとに、相手を尊重して、
相手のなっとくするやりかたで、その期日のつど、話をつけさせていただくことである。 相手の好意をいいことにして、相手を粗末にあつかっていると、
ますます自分が苦しむようになる。
【第四】に、金銭は生きものであり、もとの貸し主のほうへ絶えず返りたがっている
ものであることを思い、自分自身を楽にするような方途(みち)には、
すこしも使わず、得られただけのものは、すみやかに貸し主にかえすこと。
利息を惜しまないようにすることである。
すこし儲けがあると、ヤレヤレとすぐ楽をしたがるけれども、それはあやまりだ。
返すことに追いたてられるような暮しではなく、返すことをこちら側から追いかける
ような前向きの姿勢で、積極的に金銭を活かしてつかい、利益があるとすぐ相手に
返すようにしてゆくと、ますます利益があがるようにできている。
ここに重大なカナメがある。ここを考えちがいして、惜しんだり、
ケチケチしたりしていると、いつまでたっても、うだつがあがらない。
自分のほうに引きよせようとすると、金銭は逃げてゆく。
くりかえしていうが、自分にはほんとうに借金を返す気があるのかどうかを、
毛ほどのごまかしもなく自分自身に問いつめることである。ほんとうに返す気がある
ならば、借金は返せるし、返す気がなければ、けっして返せない。
心が事情に先行するからである。
(月刊『新世』一九六六年九月号より)
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会社での借り入れはあと5年で完済。
無借金経営にします。