仕事も将棋も姿勢で決まる

私たちが日常生活を滞りなく送れるのは、脳からの指令が、
身体の各部分に正常に伝わっているからです。
脳の指令を全身に伝える神経が通っているのは背骨です。
心身の健康維持の第一歩は、
背筋をまっすぐに伸ばした正しい姿勢から始まるといってもいいでしょう。

そもそも人類が他の動物とは違う進化を遂げて、さまざまな技術や文化を創造することが
できたのは、背骨を伸ばした直立の姿勢をとることができたからだ、といわれています。
太古の昔、人類の祖先は四本足で歩いていました。やがて二本足で立って歩くようになってから「手」が発達していきました。
それと同時に「指」も発達し、物をつかむ、動かす、作る……という行動を身につけ、
そうした進化を通して、頭脳が発達していきました。
現代人の脳容量は、原初的な人類といわれる猿人に比べて、およそ三倍にも増えたといわれます。
もし、人類が四本足のままだったなら、当然、手の進化はあり得ず、
頭脳がこれほど発達することもなく、現代の文明、文化が誕生することもなかったでしょう。
人類史における、こうした姿勢と文明の関係は壮大で、実感が湧かないかもしれません。
しかし、日常で考えても、体の構えや物事にあたる際の姿勢は、結果を大きく左右するものです。
かつて将棋界で前人未到の記録を次々と打ち立てた大山康晴十五世名人は、
将棋に強くなるコツとして「将棋の技術を学ぶことと、心の持ち方が大切だが、
特に〝姿勢を正す〟ことが一番大切です」と述べています。すなわち
「悪い姿勢では、将棋は強くならない」ということでしょう。
華道や茶道、書道、武道なども、必ず姿勢がその基本にあります。
正しい姿勢なくして上達はなく、それどころか、危険に遭遇することさえあるものです。
健全な精神は、背筋を伸ばした正しい姿勢において養われていきます。
心と身体は切り離せないもの、一体のものですから、形が歪めば、中身も歪んでしまいます。
だらしのない姿勢では、よい知恵も、判断力も、創造力も湧いてきません。
〈あともう一息なのに、良いアイデアが浮かばない。なかなか企画書が完成しない…〉
〈あのトラブルは想定外だった。どう対処したらいいのか〉といった困難や難題に直面した時、
身をこごめて猫背になって考えても、気持ちは暗くなるばかりです。
そうした時こそ、一呼吸おいてまず姿勢から整えるのです。腰骨を立てて背筋を伸ばし、
大きく深呼吸をしてみましょう。心が落ち着き、気力が湧いて、問題解決のヒントや、
思いがけない名案が浮かんでくるものです。
姿勢を正すことを通して気持ちも行動も正し、一日を晴れやかな気分で過ごしていきましょう。
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常に姿勢を正していきます。